重みが蓄積されていく「名もなき家事」問題
瀧波 伊藤さんと比べれば私がこなす家事の量は多いです。でも夫との分担どうこうより、私が恵まれているなと思うのは、夫と風通しがいい関係を築けていること。この世には「お前は働いていないんだから家事を全部やって当たり前だろうが」とかぬかすバカ男が山ほどいる。うちの夫はそんなことを求めはしないし、不満があれば表明できる間柄ですし。
阿古 たとえささやかな不満や不信でも、蓄積されたときの厚みと重みはとんでもない。ささやかなうちに解決したほうがいいです。
瀧波 まだ家事の分担を試行錯誤していた時期、ゴミ箱からゴミ袋を出して捨てたら次の袋をかけておく、というのが私の中で譲れないルールでした。でも夫は「気になったらやればいいや」というくらいにしか考えていないので、何度見ても次の袋をかけない。ある日、たまりかねて泣きながら怒ったんですよ。「どうしてゴミを出したら終わりなの、次のゴミ袋をセットしてくれないの」って。
伊藤 そりゃ旦那さんもビックリしたでしょ。
瀧波 単に夫には呪いがかかっていなかっただけだったんですけどね。ゴミ袋なんて女がセットすればいい、という思想ではなくて(笑)。でもこういう不満を言えない人が、いっぱいいると思う。
伊藤 阿古さんは今、旦那さんと家事の分担はどのくらいですか。
阿古 見えざる家事を含めると、だいたい6対4から7対3くらいで、私のほうが多いと思います。でもトータルではバランスが取れていますね、私としては。実は30代の半ばごろにうつになって、半分寝たきりのような状態で暮らしていたんです。
伊藤 ふんふん。あたしと同じ。
阿古 そのときは夫が全部、家の中のことを引き受けてくれて。夜中まで仕事をしているのにごはんを作ってくれていた時期があるので、人生トータルで見るとバランスが取れているのかな、と。
瀧波 バランスでいえば、夫が子どもの勉強をみてくれるのがすごくありがたいです。今の小学校って毎日宿題が出るんですよ、それもいろんな教科で。
伊藤 とにかく、おふたりの旦那さんたちは日本の男にしては家事ができるようですね。あたしが見たところ、アメリカの男の子はけっこう家事をする。世代的にフェミニズムの教育が浸透していて、女の子を大切にする、搾取しないということが刷り込まれているんです。日本の男子もあたしらが腰を据えて頑張れば、20年後はそうなってくれているのではと、希望をこめて。
阿古 自分のことは自分でする精神が徹底されているんでしょうね。