撮影:木村直軌
現代の台所事情から女性と料理を論じる阿古真理さん、アメリカで3人の娘を育て上げ、夫を見送った伊藤比呂美さん、現在進行形で家事と子育てと仕事に奔走する漫画家の瀧波ユカリさん──世代も家族状況も異なる3人が語り合う、家事についてのあれこれ。後編はいよいよ「女はなぜ家事から解放されないのか」という核心に迫ります

〈前編はこちら

結局最後は「私のやり方じゃなきゃダメ」

伊藤 さて、我々がしなきゃいけないのは、平成の子どもたちに、「女は家のために身を粉にせよ」という刷り込みが引き継がれないようにすることです。

瀧波 私は料理という点ではあんまり親の味とかやり方を受け継いでいなくて、私自身のものも、子どもに受け継がせたくないんです。料理道、掃除道みたいに「かくあるべき」としちゃいけないと。でもたしかに自分のこだわりはあるし、子どももそれを日常的に見ているから難しいんだけど。きちんとしたお箸の持ち方、ご飯は左でおつゆは右とか、そこまでは教えるけど、もしやそれもこだわりなのかな、と。だから、果物を切ったらそのままフルーツナイフでぶっ刺して口に運ぶ、みたいなのに憧れる。そうだ、もう、子どもにそういう姿を見せます。鍋からラーメン食べます!

伊藤 あたしそれみんな、もうやってますよ(笑)。昔なにかの本に書いたんですけど、死んだうちの母は「妖怪家事ばばあ」だったんですよ。

阿古 アハハ。何ですか、それ。

伊藤 子どものとき、母に掃除をしろと言われて掃いていると、ひっぱたかれるんです。やり方がなってない、最初からやり直し、と。母は自分のやり方で完璧に家事を回したい。

瀧波 で、最後は「アンタのやり方じゃダメ」、結局「私がやらなくちゃ」。

伊藤 ああはなりたくないなと思って、母を反面教師として、娘たちには、小さい時分から家のことを全部やらせましたよ。でも未熟者がやるわけだから、それもあってうちは汚かったんです。

阿古 家事は「その家のやり方」が世代を超えて連綿と受け継がれるので、外の流儀が入りにくい。結婚相手との異文化交流のほかに、よその家の家事の習慣を知るといいですね。

伊藤 それは、よそのうちに行って、見る、ということ?

阿古 意外な発見があって驚くこともありますよ。たとえば、先日知ったのは、プラスチック容器に入れたおすそ分けをいただいても、その容器は返さなくていいということが一部では当たり前になっているらしいこと。私は洗ってお返しするのが常識だと思っていたのですが。

瀧波 ああ! レンジでチンできる「ジップロック コンテナー」などはそうかも。世界の共有財産みたいに、こちらのお宅からあちらのお宅へ。

伊藤 えー、そうなんですか。