オレが死んだら、木の栄養になりたい

それは脳梗塞からの闘病中も変わらず、1年後に亡くなったときには葬儀からお墓まで、桂子さんは試行錯誤をすることに。

「お墓については、実家のお墓に入りたくないようだとはうすうすわかっていました。次に、近所にお墓があれば毎日お参りもできて嬉しいかもと思ったのだけど、宗派が異なったり、お墓の雰囲気がどうも好きになれなかったり」

樹木葬を思いついたのは、山小屋の近くに植えた栗の木が育ったのを見て、「オレが死んだら、木の栄養になりたい」と夫がつぶやいていたのを思い出したからだそう。

「でも当時、樹木葬を募集していた墓苑が岩手県と鳥取県しかなかったんです。埋葬したはいいけれど、お参りが大変で放ったらかしにしたら悪いでしょ。同じ自然葬なら、海洋散骨にして『お魚の栄養にしたらダメかしら?』とも考えたのですが、相談した甥っ子から『おじちゃんは海ってイメージじゃないよ』と却下されてしまって(笑)」

ほとほと困った桂子さんは、お墓選びを小休止。葬儀で集まったお香典を自然保護団体へ寄付しようと決めて、夫も賛同してくれそうなNPOをネットで探し始めた。

「そのとき、たまたま、八王子市で里山保全活動をするロータスプロジェクトという団体が、『東京里山墓苑』で樹木葬をスタートするという告知を見つけたんです」

さっそく甥っ子に車を出してもらって見学に行くと、里山を背景に巌のような納骨堂があり、脇には山桜が植わった墓苑があった。

「ひと目見て、ああ、夫が好きそうだわって思いました。それに隣には、ペットが入れる共同墓もある」