共同墓や自然葬など、これまでの常識にこだわらないお墓が今増えている。先祖代々の墓所を子孫に持ち越したくないと考えた女性たちに、行動を起こしたきっかけや直面した難問を聞いた。(取材・文=山田真理)
「遺言書がないと困る」と伝えていたけれど
「私が8年前、夫のお墓を探していたころにはまだまだ選択肢は少なかったですね」
そう語るのは、自宅で料理教室と予約制レストランを営む天野桂子さん(67歳)だ。8歳年上の夫が脳梗塞で倒れるまでは、夫婦2人で30年以上、東京・下北沢で飲食店を営んできた。子どもはいないものの、飼い主をなくした保護犬などを引き取って可愛がってきたという夫妻。
「もう一つ、夫婦で25年間楽しんできたのが秩父の山小屋です。飲み仲間で資金を出し合い、丸太を積んでログハウスを建てて。休みのたびに集まっては囲炉裏端で飲んだくれるのが、夫は大好きでした」
お店は深夜までの営業で生活は不規則、酒量も多かったことから、「夫は早死にしそうだな、と私は思っていたの(笑)。お店のこともあるし、『遺言書がないと困る』と伝えてはいましたが、『お前はオレを早く殺したいのか!』と、一切耳を貸してくれませんでした」