富山県「あいの風とやま鉄道」が運行する観光列車「一万三千尺物語」。富山~泊間と高岡~黒部間を往復する。車内では地元の海の幸を楽しめる(撮影◎北村 森)
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、商品ジャーナリストの北村森さんが、住んでいる地元を旅する「地元再発見」について解説します

消費喚起策スタートもまずは近隣旅から?

政府が「Go Toトラベル」事業を 7 月22日に開始しました。旅行代金の割引を支援するというものです。たとえば 1 泊 2 食2 万円の宿に泊まると、宿泊代金は 1 万3000円となります。でも、スタート前から激論を招きましたね。結局、開始時には東京都在住者は除外、そして都内での宿泊もまた除外に。

これから私たちはどうする? 東京都民以外の方には「Go To トラベル」の恩恵があるとはいえ、遠隔地への旅は不安でしょうし。

これはもう「まずはそれぞれの人が、住んでいる地元を旅する」ところから始めるのがいいのかもしれません。足元の宝物に改めて気づくチャンスを得られたと考えたい。

たとえば……。全国各地に「ちいさくて、いい宿」が結構ありますよね。客室数が少なく、人気も高いため、以前はなかなか予約できなかった。地元で光る、そんな一軒の価値に触れるのはどうでしょう。神奈川・鎌倉の邸宅を生かした「鎌倉古今」、新潟・南魚沼の洒脱なオーベルジュ「アンドラ・モンターニュ」、石川・珠洲(すず)の料理もしつらいも見どころある「湯宿さか本」など……。

あるいは、「Go Toトラベル」とは別に各自治体が取り組む割引策を使うのも手ですね。北陸・富山の第三セクターが運行する観光列車「一万三千尺物語」は、4 月から運休だったのを 6 月後半に復活。県の助けも借りて県在住者の料金を半額にしたら、再開第 1 号の列車では、県内客が実に 8 割超だったそう。運輸部の担当部長に言わせると「列車の中でここまで地元の方言が飛び交うなんて、かつてなかった。ちょっと感激ですね」とのこと。

観光に携わる事業者の奮闘、こうした例に限らず、あらゆる地域でみられますね。地元応援にひと肌脱ぐ夏にしては?