『ミュージカル プロデューサーズ』

史上最低のミュージカル製作で二人は大儲けできるのか!?

落語の“熊さん・八っつぁん”しかり、短慮で粗忽(そこつ)、愚かだけども、その分「わかるなぁ」とシンパシーを抱いてしまう人々が出てくる物語というのは、どうしてこうも魅力的なのか。1968年の同名映画をもとに、2001年にブロードウェイで舞台化、今も世界中で愛されている『プロデューサーズ』も、そんな系譜に連なるひとつ。おおいに笑えて、観た後はスッキリ、しかもとびきりゴージャスな舞台とくれば、見逃す手はないだろう。

物語はまさにブロードウェイの楽屋裏で展開。プロデューサーのマックス(井上芳雄)は、かつての栄光はどこへやら、今は落ちぶれて破産寸前だ。ところが気の弱い会計士レオ(吉沢亮/大野拓朗)と話すうち、舞台が成功するよりも、失敗したほうが利益を生むことに気づく。

マックスはさっそくレオを巻き込んで“失敗作”を上演するべく画策。最低の脚本家フランツ(佐藤二朗)や最低の演出家ロジャー(吉野圭吾)をおだててスタッフに迎え、英語を話せないスウェーデン娘のウーラ(木下晴香)を主演に据えて、自信満々でのぞむが……。

小ずるく世渡り上手だが、今は落ちぶれたマックスを演じるのは、長年“ミュージカル界のプリンス”として君臨する井上。40代を迎え、近年はストレートプレイやテレビドラマにも積極的に進出、味わいを増してきた彼のマックス像に注目だ。

その相棒となるレオには、当代きっての人気俳優で、これが3年ぶりの舞台出演となる吉沢と、ドラマに舞台にと幅広く活躍中の大野がWキャストで。どちらも爽やかな二枚目だけに、強引なマックスに引きずられるレオという意外な配役が楽しみだ。

そのほか、ミュージカル作品でメインキャストを多々演じてきた木下と吉野の共演は頼もしい限り。さらに演出は、ドラマ『今日から俺は‼』のスマッシュヒットも記憶に新しい福田雄一が担当……となれば、ヒトラー好きの変人で脚本家のフランツ役に、“福田組”常連で、独特の存在感でお茶の間でも人気の佐藤が配されるのも納得だ。

肩の力を抜いて楽しめる、王道ミュージカルコメディ。極上のエンターテインメントをご堪能あれ。

ミュージカル プロデューサーズ

11月9日~12月6日/東京・東急シアターオーブ
脚本/メル・ブルックス、トーマス・ミーハン
音楽・歌詞/メル・ブルックス
オリジナル振付/スーザン・ストローマン
日本版振付/ジェームス・グレイ
演出/福田雄一
出演/井上芳雄、吉沢亮・大野拓朗(Wキャスト)、木下晴香、吉野圭吾、木村達成、春風ひとみ、佐藤二朗ほか
TEL 03・3201・7777(東宝テレザーブ)

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『ミュージカル RENT』

“今”を 生きる若者たちの群像劇

数多の名作ミュージカルの中でも、これほど青春の眩しさと苦さをもって、観客の胸に消えないうずきを残す作品はないのではないか。本作を手掛けたジョナサン・ラーソンは奨学金で大学を卒業後、ウェイターのアルバイトをしながらミュージカルの創作に打ち込んだ。 “まだ何者でもない”自分たち、ドラッグ、エイズ、漠然とした不安と希望……。それらをすべて詰め込んで出来上がったのが本作だ。

ところが公演初日を控えた1996年1月25日、ラーソンは胸部大動脈瘤破裂によってこの世を去る。享年35。初日は予定通り行われ、絶賛を得てブロードウェイでロングランとなったのは知られる通りだ。

東宝版は約3年ぶり6回目の上演。配役は毎回すべてオーディションで決められており、今回も進境著しい若手実力派がそろった。初演時のエイズが蔓延する世情は、今の困難な状況と重なる。「あなたは1年という時間をどんなふうに計る?」と問いかける名曲「Seasons Of Love」が、どのように響くのか見届けたい。

ミュージカル RENT 

11月1日~12月6日/東京・シアタークリエ
脚本・歌詞・音楽/ジョナサン・ラーソン
演出/マイケル・グライフ
日本版リステージ/アンディ・セニョール Jr.
出演/花村想太(Da-iCE)・平間壮一、堂珍嘉邦(CHEMISTRY)・甲斐翔真(以上Wキャスト)ほか
TEL 03・3201・7777(東宝テレザーブ)

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください