右から関谷秀一先生、山本浩未さん(撮影:目黒智子)
かつては限られた人だけが行うイメージだった美容医療。けれど今、そのハードルは下がり、わずか数分で痛みも赤みもなく、ごく自然なメンテナンス感覚で受けられるものが数多く揃っています。人生100年時代に、美容医療を活用するメリットと上手な付き合い方を、美容外科医の関谷秀一先生に教えてもらいました(撮影=目黒智子(人物)、ジョン・チャン(商品) 文・構成=片岡えり)

若返りへの一発逆転ではなく、 定期的なメンテナンスと考えて

年に1度の大掃除 古くなったらリフォームを

山本 昔は、美容医療というとかなり大掛かりで、不自然な仕上がりになるイメージでした。けれど、今はとても身近なものになりましたね。

関谷 「手術」が全盛だったのは、20世紀の終わりまで。1990年代後半からレーザーマシンを使う美肌治療やヒアルロン酸注入が登場し、施術時間もダウンタイム(施術後、元の肌状態に戻るまでの時間)も短くなりました。

山本 私が美容医療にトライしたのは20年ほど前です。ロサンゼルスのサロンでケミカルピーリングを受けてから、美容皮膚科的施術に興味を持ち、更年期だった49歳の時にヒアルロン酸注入を体験。いくつになっても“きれい”への可能性があると確認し満足しました。以来、美容医療から遠ざかっていたのですが、最近改めて必要性を感じるようになって。

 

関谷 顔は家と同じです。毎日掃除しても汚れるし、丁寧に住んでいてもいつかは劣化する。年に1度の大掃除は必要だし、古くなったらリフォームすればリフレッシュできますよね。例えばシロアリが出る前に修繕したほうが、時間も費用も抑えられます。僕は、外見は環境の一部だと思っているんです。きれいだと自分も周りの人も気持ちがいいでしょう。

山本 身ぎれいにするのは、気配りでもあるということですね。ところで、人生後半戦になると一部ではなく、肌を丸ごとリフォームしたくなりますが、予算も限られているし……。その場合、先生はどうアドバイスされますか?

「美容医療は古い家のリフォームと同じ。長持ちするし、自分も周りも気持ちいい」関谷先生

関谷 カウンセリングで、どこが一番気になるか、どういうきっかけで美容医療を受けたくなったかなどを探ります。基本的には自分で決めてほしいから、こちらから誘導はしません。

山本 でも客観的な目線で、ここをやったほうがきれいになりますよ、という助言がほしい気もしますが……。

関谷 強いていうなら、初めての方が「がっつりやりたい」と言っても、控えめにしておくのがポリシー。後から足すのは簡単だけど、戻すのは大変だから。特にヒアルロン酸注入の場合、足りないくらいが自然な仕上がりになると思います。どこまでやるとアンバランスか見極めるのも医師の経験と技量。慣れている患者さんだと、本人の希望どおりが正解の場合もあるのですが。(笑)

山本 先生のカウンセリングはユニーク。たるみについて相談したら、美容医療をすすめず、表情の作り方を指導されますよね。

関谷 日常の筋肉の使い方次第で、肌は引き締まるし、逆にシワが深くなることもありますから。美容治療を受けると同時に、表情の癖やホームケアも見直せば、効果が高まり長続きするんです。