家族って互助会みたいなもの

中村 サムソンさんと、籍は入れてないんですよね?

能町 私は籍を入れるつもりだったのですが、向こうが乗り気じゃなくて。「なにかあった時に介護させるのは申し訳ない」と思っているみたいです。なので、正確には“結婚”ではなく“結婚的な生活”で、“夫(仮)”という状態です。

「結婚」の顛末を綴った『結婚の奴』能町みね子・著 平凡社

中村 介護の問題ね。私の場合は7年前に病気になって夫に介護してもらうことになったわけだけど、結婚する時は当然、介護する・される関係になるなんてまったく想定してなかった。でも能町さんだって新婚早々ウンコ漏らして、すでに世話焼いてもらったんでしょう?

能町 それは、はい……。シーツを洗ってくれましたね(笑)。サムソンさんは結婚を生命維持装置だって言っているんです。病気になったり精神的に落ちてしまった時のことを考えると、誰かと暮らしているほうがいいよね、と。互助会のような感じかもしれません。

中村 結局、家族って互助会だよね。うちは結婚して半年ぐらい同居しないで近所に住んでいたんだけど、ある日突然連絡がとれなくなったんです。風邪で寝込んでいただけだったけど、ものすごく心配したわけ。それがきっかけで同居することになって。一緒に暮らしているほうがお互いに助け合えるし、家賃ももったいないじゃない。その代わり、「お互いの生活習慣や恋愛には干渉しない」「彼氏ができてもこの家には連れ込まない」という最低限のルールを決めました。能町さんは約束事とかある?

能町 一応あります。二人で「結婚」について語るイベントをした時に、彼が「お金さえ入れてくれたら家事はやる」と言って、それが続いている感じです。

中村 毎日ご飯作ってくれるんでしょう? うらやましい。

能町 ありがたいですね。風呂掃除も洗濯もしてくれて、本当に助かっています。

中村 うちは基本的に、食事は別々。夫はたまーに気が向いたら作ってくれるけど、それを義務にはしたくないと思って。

能町 わかります。サムソンさんは、本業のライター仕事はほぼ休業中で、パートで働いていて。私が定期的に生活費を渡しているのですが、その義務感で家事をしてくれているのだとしたら悪いな、と思ったこともありました。でも、料理なども一人暮らしの時からやっていたそうなので、それならいいかって。(笑)

中村 私の父はアルツハイマーの母を介護しているのだけれど、なんで介護するのか聞いたら、「愛が2割で義務感が8割。あとちょっと罪悪感」だって。父は高度成長期の典型的な商社マンで、家庭は放ったらかしだったからね。介護にしろ家事にしろ、いろんな感情が入り混じってくるし、夫婦は義務感でつながれる部分もあるとは思うけどね。

能町 確かにそうですね。