徹底的に凝ってしかも華やかに
昨年開かれた80歳の誕生日はパリのレストランを貸り切り、桜の木を飾り、多勢の招待客を招いたとても盛大なもので、お色直しを何回もされた賢三さんは元気に踊っていました。こういったお祭り騒ぎが好きなのも、賢三さんがパリ・コレクションで驚くようなセッティングでショーを開催していたことを考えるとうなずけるのです。それも徹底的に凝ってしかも華やかに。
そんな派手な一面もあるかと思えば、ある時サンジェルマンの蕎麦屋で一緒に食事をしていたところ、離れた席で食事をしていた「VOGUE USA」のファッション・ディレクター、グレース・コディントンがわざわざ席まできて「ケンゾーだよね、わからなかった。なぜあなたはいつまでもそんなに若いの?」と質問をされた時、まるで少年のようにとても恥ずかしそうな顔をされていたのが印象的でした。
来日された時は時間を見つけて、ご紹介した根津の小料理屋さんにも時折姿を見せ、というのはその小料理屋をやっているのは賢三さんのショーも含め、パリコレクションに10年以上出ていた元モデルさんだからなのです。そんな律儀な一面を持っている方でした。
そろそろ日本にも家を持ち、パリと東京を半々で暮らしていこうかなと言われていた矢先のことなので、とても残念です。