「1ヵ月くらいたったある日、朝起きて突然、『そうだ、こんな私を七奈美は好きではない。このままではダメだ』と思って――」(キャシーさん/撮影:藤澤靖子)
〈本日の『徹子の部屋』のゲストは、キャシー中島さん〉ともに大切な家族を見送った経験のあるキャシー中島さんと残間里江子さん。悲しみの淵にあっても、残された側の毎日は続きます。いかにして気持ちを立て直したのか、また、死に直面したことで、その後の生き方はどう変化したのか、語り合いました(構成=篠藤ゆり 撮影=藤澤靖子)

誰かが「カット!」と言ってくれないか

残間 新型コロナウイルスが広がってから、やはり私も鬱々としているのでしょうね。寝る前は「よしッ! 明日こそ元気で」と思っているのに、目覚めるとちょっと気持ちが落ちている日もあります。でも昨夜はキャシーさんのブログを見て、庭のお花は美しいし、なにより他を圧するほどのキャシーさんの笑顔に励まされました。

キャシー ありがとうございます。

残間 キャシーさんは11年前、長女の七奈美さんをがんで亡くされましたよね。悲しくて苦しくてつらいことを乗り越えた人にしか出せない笑顔だな、と思って見ていました。

キャシー 私は泣き虫ですが、ずっと沈んでいるのではなく、時期が来たら顔を上げるタイプです。深い悲しみの中にいたらみんな優しくしてくれるし、ある意味では楽ですが、それは私が望んでいることではないので。

残間 とはいえ、当時の憔悴しきった姿を映像などで拝見すると、そこだけモノトーンの世界みたいな印象を受けました。だって娘さん、まだ29歳だったんですものね。新婚旅行先で咳が止まらなくなり、帰国して肺がんが見つかった。幸せの絶頂だったのに、あっという間にいなくなってしまったわけですから……。

キャシー 自分が産んだ子が亡くなるというのは、なかなか受け入れられません。夫(俳優の勝野洋さん)と2人でエレベーターに乗って霊安室に行く時、私、「誰か撮影現場みたいに『カット!』と声をかけてくれないかな」と言ったんです。すると勝野が「そうだね。ドアが開いたら、七奈美が『なんちゃって』と言ってるといいね」。そんな話が出るくらい、いなくなってすぐは現実味がないんですよ。

残間 「これは嘘よ!」という感じですよね。

キャシー そうですね。大きな悲しみがやってくるのは、そのあと。外に出て若い女性を見ると、「なんでこの子は元気で生きているのに、うちの子はダメだったんだろう」とか「私が死んだほうがよっぽどよかった」と、それまでの自分だったらありえない思いが頭に浮かぶ。一時期は、私が一番嫌いな人間になっていました。

ところが1ヵ月くらいたったある日、朝起きて突然、「そうだ、こんな私を七奈美は好きではない。このままではダメだ」と思って――。持っている服のうち一番派手な真っ赤なワンピースを着て、帽子をかぶって真夏の銀座に出かけたんです。

残間 わあ、カッコいい!

キャシー 歩行者天国を歩いていたら、「お元気になられたんですね」「キャシーさん、カッコいい」と声をかけてくださる方々がいて。あぁ、私は生きていかなくちゃ、泣いてばかりはいられないと強く感じました。

残間 赤いワンピースというのが、キャシーさんらしい気がします。

キャシー 自力だけでは難しいので、そういうツールの力を借りるんです。