◆銭湯はこれからもっと楽しくなる
東京にもいい銭湯がたくさんありますが、地方の銭湯も面白いんですよ。先日行った大分・中津の汐(しお)湯は割烹も兼ねていて、増築に増築を重ねた温泉宿のような不思議なところでした。大きな窓の前に炬燵が2つあり、お風呂上がりに炬燵にあたりながら牛乳を飲んでいたら、思わず眠り込みそうになりました。
千葉・習志野にあるクアパレスは、ヴェルサイユ宮殿のようにゴージャスな建物。ご主人が番台で思いついたことをメモして、それを大工さんに伝えて改良を重ねるという、斬新な方法をとっていらっしゃいます。派手なだけでなく、お風呂の質も気配りもすごくいい。銭湯というのは小さな場所なので、ご主人の世界観がすごくよく出るんですよね。
私はスーパー銭湯も決して嫌いではありません。でも大型店はその館内だけで完結してしまいがち。一方、銭湯は街歩きと組み合わせたり、ひと風呂浴びた後に地元の居酒屋に立ち寄ったり、いろいろな楽しみ方ができるのが魅力です。
残念ながら、銭湯の数は、どんどん減っています。昭和40年代は全国に1万7000軒以上あったのが、いまは4000軒ぐらい。経営者はもちろん高齢化していますが、後継者がいないというより、子どもに継がせたくないという方が多いんです。というのも、昔からやっている方は一番いい時を知っている。お風呂のない家がたくさんあった頃は、黙っていても人が来ました。当時と比べるとどうしても斜陽産業に思え、子どもには継がせたくないと考えられるようです。
でも私たちの世代から見ると、最初からこのぐらいの状況なので、とくに斜陽とは思っていません。30代ぐらいの三代目が家業を継いで、店でのワークショップやイベントなど面白い試みをしたり、銭湯にさまざまな可能性を感じている人も結構います。若者にとっての銭湯は身ぎれいにするところというよりも、遊びに行くところであったり、コミュニケーションの場であったり。これからいっそう居場所として再評価されていくと思います。
銭湯に出会う前と後では、私の人生は変わりました。病気になる前と違って、自分の弱いところも今は受け入れられる。お風呂に入った後は気持ちも穏やかになりますしね。体調が良くなったのはもちろん、すごく前向きになれました。
まだまだ描きたい銭湯がたくさんあります。これからも図解を描いていくことで、銭湯への恩返しができればと思っています。