◆自分が見た銭湯の風景を100%以上再現

そうして銭湯探訪を始め、ある時行った東上野の寿(ことぶき)湯があまりに素晴らしかったのです。居心地がよく、建物も魅力的。これを何とか友人に伝えたいと思って、絵に描いてツイッターに投稿したのが「銭湯図解」の第1号でした。それが銭湯好きの方の間で話題になり、以来200軒以上の銭湯に通い、図解にしたのは70軒ほどになります。

図解作成の手順としては、まず営業1時間半くらい前に取材を申し込んだ銭湯に伺い、お風呂の中をコンベックス(メジャー)やレーザー測定器など専門の器械を使って実測調査。写真撮影もします。次にご主人へのインタビュー。そして取材後は実際に自分もお風呂に入ります。

データを家に持ち帰ったら、縮尺を決め、定規を使って下書き。次にトレース台の上で下書きに水彩紙を重ねてペンで描き込んでいく。一番こだわるのは着彩です。写真を手元に置き、お湯の色や質感なども含めて、自分が見た銭湯の風景を100%以上再現できるように心がけながら仕上げていきます。

建物や施設だけでなく、人物や出来事など、実際その時にあった出来事を絵に盛り込むことも多いですね。常連さん同士が背中を流しっこしていたり、子どもが母親に泣きついていたりするところとか。自分が打たせ湯を脳天に受けているのもこっそり絵に加えたり。このあたりはリアルにしようと意識しています。

塩谷さんの勤務先である高円寺の小杉湯図解(男湯・女湯)。深夜1時45分まで営業し、場所柄、20〜30代の若いお客さんも多い(『銭湯図解』より)