◆体はうちで働きながら治せばいいんじゃない?

取材中、お風呂に入りながら、お客さんに声をかけて話を聞くのも楽しみです。銭湯って不思議な場所ですよね。道で突然話しかけられたらびっくりしますが、銭湯だとすぐ打ち解けて話ができる。話を抜けたい時は、「ちょっとのぼせたから」と自然に切り上げることもできるし、人間関係の距離感がほどよいんです。

私が今働いている小杉湯のご主人・平松佑介さんとは、SNSで発表していた「銭湯図解」を通して知り合いました。

体が復調してきて最初は元の職場に戻ったのですが、やはりハードな建築業界は難しかった。そんな時に「塩谷ちゃんが小杉湯に転職したらめちゃくちゃ輝けると思うよ。体はうちで働きながら治せばいいんじゃない?」とお誘いいただいて。(笑)

最初は逡巡しましたが、思い切って飛び込んでよかったと思います。毎日昼過ぎぐらいに来て、掃除やタオルの補充など開店準備。15時半に開けて、その後は裏のほうでPOP
やポスター書き。夜は番台に上り、終わったらお風呂に入ってから帰ります。営業中はとにかく忙しい。ドライヤーのコインがいっぱいになると動かなくなるので回収する、タオルが溜まってきて洗わなくちゃ、そうこうするうち誰かがのぼせて倒れる……。でも肉体労働としては大変ですが、生活は豊かになりました。

銭湯の仕事って、来た人がどれだけ心地よく過ごしてくれるかが一番重要。シンプルだけど愛のある仕事です。それに掃除すればすぐ結果が見えるし、POPを置けばすぐ反応がある。お客さんのダイレクトな声には手ごたえを感じます。何より職住近接ならぬ職住湯近接で、お風呂好きにはたまりません。

写真提供:アベトモユキ