イラスト:大塚砂織
 

日焼け止めやコンドームは非課税なのに

「タンポン税を非課税にします」

首相のこの発言には、正直驚いた。2018年10月、生理用品にかかる10%の税金を撤廃する法案を政府が承認。テレビでも新聞でもタンポン税のニュースが取り上げられ、公の場でこのような言葉が発せられることを含め、時代は変わったものだと感じた。

オーストラリアで日本の消費税にあたるGST(グッズ&サービス税)が導入されたのは2000年。当時のハワード首相が決定し、国民に大きな衝撃を与えた。日本の消費税と異なるのは、食料品を含めた基本的な生活必需品をはじめ、教育費、医療費、育児費、宗教サービスなどは非課税という点だ。

しかし、日焼け止めやコンドームは非課税にもかかわらず、生理用品は課税対象とされ、物議を醸した。女性にとって、生理用品は必需品である。当時の保健相は「コンドームは病気を防ぐが、タンポンは病気を防がない。したがって、ぜいたく品である」と発言し、女性団体がこれを性差別だとして猛抗議。約9万人の署名を集めてメルボルンで大規模なデモを行うなど、論争が続けられてきた。

では、なぜGST導入から約20年を経てタンポン税が急に非課税になったのかというと、そこには来年行われる総選挙が関係している。

「タンポン」のようにメディア受けするインパクトのある言葉を使って女性票を集めることが、最大の狙いだろう。その証拠に、生理用品が課税対象になった時には、与党からも野党からも特に反対意見は出なかったにもかかわらず、非課税が決まった後は与野党が「自分たちが先にタンポンの非課税を提案した」と主張し合っている。

さらに最近は女性議員の活躍が目覚ましく、何人も入閣したり、野党第一党・労働党の副党首にも女性が抜擢されたりして、どうやら風向きが変わったようだ。彼女たちの影響も少なからずあったのだろう。

当事者の女性たちは、タンポン税の廃止に大喜び。シニアライフに欠かせない尿もれパッドやおむつはすでに非課税だが、小児用おむつはまだ課税対象なので、今後、こちらも非課税にしてほしいという要望が出てきそうだ。(シドニー在住)