<前編よりつづく>
間違えてもいいからボタンを押す
重松 コロナ禍で、僕が教えている大学でも授業はオンラインです。大学側から動画のつくり方のアドバイスがくるんですが、学生の興味をひくためにクイズ形式を多用しろなんてことも言われます。
宮崎 子どもの頃の「これ、なあに?」から始まっていますから、みんな好きですよ。そして、答えてくれる人がそばにいたら楽しい。
重松 正解したら「ピンポ~ン!」。間違えたら「ブーッ」。これも世代や地域性を超え、日本人に共通する言語のようになっています。僕は「ピンポ~ン」の音に生理的な快感を覚えるんですが、番組で「正解」した瞬間の気持ちは?
宮崎 スッと風が通り抜けるみたいな、さわやかな気持ち。
伊沢 会心の正解を出したときはカタルシスが。認められたという「承認」と同時に、ホッとした「解放」の感覚もあります。問題が流れはじめると、スタジオの中は誰も話さず緊張感に包まれる。そして解答が終われば、その緊張が一気に緩和されるんです。短時間でこれだけのことが起こると、アドレナリンも出ますよね。
重松 僕にも以前クイズ番組からオファーがあったのですが、恥をかきたくなくてお断りしました。ただ、「何を恐れているんだ」と、あとで少し自己嫌悪にも陥りましたが。見栄っぱりなんですね、われながら。(笑)
伊沢 僕は、初めてクイズ番組に出していただいたのが16歳でした。「最年少だし、間違えてもいいや」と、のびのびとプレーができた。今もその感覚がベースにあります。テレビ番組で間違えることに慣れていると、逆に勝負強くなるのではないかと思います。宮崎さんもそうじゃないですか?
宮崎 そうね、「ええい、もうしょうがない」でボタンを押してます。恥をかくのも仕事のうち。視聴者の方が「こんなのを間違えるなんて」と優越感を持つ。それも含めてクイズの解答者だと思っています。でも間違えるとやっぱり悔しいし、そりゃあ、全問正解したいですよ。(笑)