『読売新聞「シングルスタイル」編集長は、独身・ひとり暮らしのページをつくっています。』(森川暁子:編著/中央公論新社)

ひとり者にとっては、少し難しい季節

かくしてひとりに優しくなった世の中が、がぜん家族モードになるシーズンがある。年末年始だ。正月は家族で過ごす時間だ、と一般には考えられていて、ひとり者にとっては、少し難しい季節といえる。にわかに実家に合流して正月を迎えるシングルは少なくない。私もだいたい、そうしている。

実家に帰ったシングルの中には、久しぶりに家族の時間を存分に楽しむ人もいれば、子連れで帰ってくるほかのきょうだいに混じってちょっと据わりの悪い思いをしたり、「結婚しないの」と詰め寄られて困り果てたりする人もいる。地元のショッピングモールも家族連ればかりで、周りを見回してちょっとため息をつく人も。そして、(個人的にはこれが結構大きいように思うのだが)この時期は夜がとても長い。しばしば、「自分は、いつまで実家に帰れるんだろう」とか「この先ずっとひとりなのかな」などと、考え込む時間にもなる。

物思いは未婚者ばかりではない。連れ合いに先立たれ、「子供たちに気を使わせたくないから」と、年末年始はいつも旅に出るシニアもいる。

たぶん、日本だけではないのだと思う。アメリカの感謝祭からクリスマスにかけてのホリデーシーズンや、中国の春節など、ひとりで過ごしづらい季節というのは、どこの地域にもあるだろう。

「みんなで年越しナイト」ツアー

去年、過ごし方に迷う人がいるのなら、いっそそういう人ばかりで集まって一緒に年越ししたらどうだろう、と思い立った。シングルスタイルの読者に呼びかけて、ひとり参加限定の「みんなで年越しナイト」というツアーをやってみた。

18人の参加者と、貸し切りバスで東京駅から高尾山(東京都八王子市)へ。会食し、温泉で温まり、除夜の鐘を聞きながら薬王院さんのお護摩修行を見学した。みんな、恐らくは日ごろあまりしないだろう自分の話をオープンに語っていたように見えた。

互いに耳を傾け合って、「ああ世の中にはいろんな人がいるもんだ」と納得し、未明の東京駅で解散した(私はそのまま新幹線の始発で大阪に帰った)。今となっては夢のような3密の夜だった。