日本人よりビール好きなフィンランド人
夏はビールが美味しい季節。ご多分にもれずフィンランド人もビールが大好きだ。国民1人当たりの年間ビール消費量は76・9リットルで世界第17位。日本の1.9倍の量に当たる(「『キリンビール大学』レポート2016年」より)。しかし驚くなかれ、フィンランドのビールは泡がなく、ぬるい。夏でも夜は長袖が必要になる涼しいフィンランドには、このくらいがちょうどいいのだ。
定番のビールは、怖い顔の熊がラベルに描かれた「カルフ」(「熊」の意味)。首都ヘルシンキに近い南方の街で醸造されている。「カルフはフルボディのビール」という宣伝文句の通り、濃厚さ、香ばしさが特徴だ。
夫の故郷ロヴァニエミは、フィンランド最北部の地域・ラップランドにある。当地を代表するビールは「ラピン・クルタ」。日本人が好きそうな爽やかな味わいで、魚料理にも合う。「『ラップランドの黄金』という素敵な意味なのに、南方に住む人は『トナカイのおしっこ』とからかうんだ」と、夫が苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていた。そんなところに南北の差が見えるのも楽しい。
そんなビール大好きフィンランド人の頭痛の種が酒税だ。お酒の種類によって酒税は異なるが、日本と比べるとはるかに高い。缶ビール1缶が約400円になることもある。そこで目をつけたのが、バルト海を挟んだお隣の国エストニア。首都タリンは、ヘルシンキからフェリーで約2時間の距離。エストニアは酒税が安い。フィンランドの半額から3分の1で買える。
そんなわけで、呑兵衛たちは、休日になると海を渡り、タリンで観光を楽しんだ後、港近くの酒屋へ向かう。エストニア産やフィンランド産のビールをごっそりケース買い。それらをカートに載せ、コロコロ転がしながら帰途につく。エストニアでは、安いアルコールを求めて海を渡ってくるフィンランド人のことを「ポロ(トナカイ)」と呼んでいるとか。
ところが、2017年7月、突然エストニアのビール税が70%も上がった。そんななか、ラトビアまで足を延ばし、さらに安いビールを買うのがブームになりつつあるのだとか。ビール好きのトナカイたちの旅は続きそうだ。(ロヴァニエミ在住)