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新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてそろそろ1年が経つが、社会の片隅で困窮を極めている女性たちがいる。「病や感染は平等」でも、その暮らしへの影響はけっして同じではない。新しい道を模索する彼女たちの選択を追った(取材・文=樋田敦子)

感染拡大は当初「対岸の火事」だった

「周囲にコロナ感染者もいなかったので、最初は遠くから騒ぎを見ている感じでした。まさか私の身に降りかかってこようとは、思いもよらなかった」

そう話すのは、東京都在住の池田聡子さん(57歳・仮名=以下同)。発端は2019年末に、駅の階段を踏み外し左足首の関節を脱臼骨折したこと。足首にボルトを入れる大手術をし、1ヵ月の入院を余儀なくされた。

池田さんの職業は歯科衛生士。すぐに勤務していた医院に連絡を入れると、「うちは小さな歯科医院なので、休むなら辞めてくれ」とあっさり解雇を言い渡され、突然収入がなくなった。退院すると松葉杖をついてハローワークに行き、失業保険の受給申請。給付金をもらいながら就職活動を始めた。

「衛生士の資格を持っているので、次の職は簡単に決まると考えていました。紹介されたリハビリ病院の歯科部の面接を受けると、すぐに内定をもらえましたから……」

4月からの仕事に備えて、リハビリを続け体調も万全に。ところがコロナの感染が徐々に拡大、そこへ病院から電話が入った。

「患者さんとの接触が難しくなり、申し訳ありませんが、今回はご希望に沿えません」と内定取り消しを言い渡された。