コロナで衛生士の求人が激減

この頃から衛生士の求人が急激に減り、ハローワークには人が増えていく。

「それまで見たことがないほどの大混雑でした。それでも私は資格を持っているから、並んでいるほかの人たちとは違うんだ、必ず決まると自分に言い聞かせました」

衛生士の求人サイトにも登録したが、希望の条件はほとんどない。友人からは「歯科医院にこだわらずに、60歳までの3年間でも社会保険、厚生年金がある会社に正社員として勤務したほうがいいよ。年金額が違う」と助言された。これまで勤務した3つの医院は個人病院で、加入しているのは国民健康保険と国民年金だった。

そこで歯科衛生士とあわせて、一般の正社員の求人にも応募。職種にこだわらずメーカーにも応募したが、書類選考で落ちてしまう。

「年齢がネックです。正社員ではなく、パートならよかったのかもしれません。月30万円近くもらえる衛生士にこだわるのがいいか、安い月給でも正社員がいいか」

今は失業保険から、月額15万6000円をもらい生活している。家賃が9万8000円。「一人暮らしなので贅沢しなければなんとかなる」というが、給付は今月いっぱい。仕事が見つからなければ、貯金を取り崩していくしかない。

「パートでもいいので職に就きたい。衛生士を続けられると思っていたのに、まさかコロナで人生の選択を迫られるなんて――」

厚生労働省によれば、コロナの影響で仕事を失った人は、7万242人(20年11月6日現在)に及ぶ。


ルポ・女性が直面する収入減・雇い止め・DV 
【1】資格があるから再就職も簡単だと思っていたけれど
【2】DV被害でシェルターに逃げ込んだ後コロナ禍拡大
【3】感染者が出て職場が閉鎖し給料が激減。シェアハウスも追い出され