夫は定年後、週に何日かアルバイトをして、月に十数万円の給与をもらっている。しかし、そのお金は私には一銭も渡さない。以前から「退職したらもう家のためには働かない」と宣言していた通り、自由に働き、得たお金も1人で使っている。休みの日はゴルフや飲み会に出かけ、気ままに過ごしているらしい。

夫が家にいるとき、三度の食事を作るのはもちろん私だ。たまーに外食に連れていってくれる先は、決まって近所の安いファミレス。なんだか割に合わない。ゴルフに出かけた日はおみやげだと言ってその土地のスーパーで野菜などを買ってきてくれるが、いつも見切り品ばかり。しおれた葉っぱをよけたり、水につけてパリッとさせたり、調理に手間がかかるからいらないのだけれど……。

 

ひたすら貯蓄に励んで一生を終えた義母

思えば、夫のケチぶりは、今は亡き義母から受け継いだものではないか。夫の母は、それはそれはお金にシビアな人だった。毎日の食費は500円と決めており、さつまあげやはんぺん、細切れ肉など安い食材を選び、ネギなどは先の先まで残さず使う。私たちが夫の実家に行ったときも、買ったものは割り勘で、何かをもらった記憶はない。

体が弱く外出することもほとんどない人だったため、服は毎日同じ。美容院に行くこともなく、真っ白な髪を義父にハサミでまっすぐに切らせていた。爪に火をともす生活とはまさにこのこと、と思ったものだ。

夫は、お金のことで私に説教した後は、必ずこの母を引き合いに出す。「母さんは、親父の少ない給料のなかからコツコツお金を貯めたんだ」「オレはあんなに高い給料をもらっていたのに、なぜ足りないなんて言うのか」と。

夫の母は確かに賢い人ではある。同居するため家を買ったときには、1000万円出してくれた。そして、最期に残してくれた預金も、1000万円あったはず。貧しさをいとわず、ひたすら貯蓄に励んだ人なのだ。