イラスト:クボ桂汰
貯めたお金で旅行をしたり、趣味に励んだり……そんな老後の青写真を台無しにしたのは「夫」という存在? 佐藤さん(仮名)の場合は、ケチな定年夫にほとほと愛想が尽きていて――(「読者体験手記」より)

年金を繰り上げ受給したいのに

私には、自由になるお金がない。夫が定年になり年金生活に入ってからは、もともと少なかった蓄えを切り崩して、とうとう銀行の残高も数万円単位になってしまった。公務員だった夫の退職金や親の残した預金などの大きなお金は、家計とは別に夫がすべて管理しており、私には触らせてくれない。現役時代は夫から毎月生活費を渡してもらっていたが、家のローンを返し、子どもたちを育てながら生活を切り盛りするのに精一杯で、貯蓄はほとんどできなかった。

それでも、子どもたちが独立し、夫婦2人きりなら年金でなんとかやっていけるだろうと考えていたのだ。しかし、次女が結婚生活がうまくいかず、ちょくちょく戻ってくるようになった。先だっては離婚話まで出てしまい、これから子どもを連れてわが家に戻ってくる可能性もある。

夫のささやかな年金だけで、夫婦プラス1.5人分をまかなうことは到底できない。私は自分の分の年金を繰り上げて受給しようと考えた。しかし、夫は猛反対。「65歳まで待っても、月に8000円程度の差にしかならないのだから」と言うと、「年に10万円近い大金だぞ!」と反論される。

私の周囲の主婦仲間でも、繰り上げてもらっている人はたくさんいるのに、夫は理屈をこねて、がんとして認めようとしないのだ。結局、「ダメだダメだ。お前の年金だって言っても、オレが払ったオレの金だ。勝手なことするな!」とねじ伏せられてしまった。自分の年金すら自由にさせてもらえない。