なぜあの人は自分のニオイに気づかないのか

では「汗臭」から見ていきましょう。これは10代半ばから20代半ばがピークで、徐々に減っていきます。皮膚の常在細菌が、エクリン腺、アポクリン腺というふたつの汗腺から出る汗をエサとして代謝、分解することでニオイが発生します。アポクリン腺がもともと多い人や、ここからの汗が出やすい人は、ワキのニオイが強くなるのです。

2つ目は「脂っぽい汗のニオイ(ミドル脂臭)」。体臭の中で、とくに女性の不快度が高いニオイで、30代半ばから40代半ばくらいにかけて強くなります。汗に含まれる乳酸を皮膚の常在細菌が代謝、分解することで臭気成分「ジアセチル」が発生。皮脂が代謝、分解されてできた中鎖脂肪酸と混ざり合って、後頭部やうなじを中心に不快なニオイを発します。

若い頃の皮脂はやわらかく、洗えばほぼ落ちますが、加齢にともない皮脂はラードのように固くなり、洗っても落ちにくくなります。皮脂が臭気成分であるジアセチルと混ざり、落ちにくい皮脂にニオイが蓄積していくことで、より強いニオイが発生するのです。実はジアセチルは、感じる人と感じにくい人に分かれます。男性の3人に1人はジアセチルを感じにくいといわれています。自分のニオイに自覚がない人がいることには、そういった理由があるのです。

3つ目が、「加齢臭」。これは50代半ばから増えてくるニオイで、「ノネナール」という臭気成分が原因です。背中や胸といった体幹部の、皮脂が多く分泌するあたりから発生します。古い畳や枯れ草のようなニオイが特徴で、ジアセチルに比べて、さほど不快度の高いニオイではありません。ですから、夫がクサい=加齢臭とは限らないのです。

「足のニオイ」は年齢によるニオイの強さの変化はなく、汗をかくことで菌がイソ吉草酸という臭気成分を出すのが原因です。足の指の間や爪まわりに菌が多く、汗をかきやすい部位なので、ニオイが発生しやすくなります。指の間と爪まわり、足の裏を常に清潔にしておきましょう。