足腰が弱り、気軽に外出できない。伴侶を亡くして暮らしに虚しさを感じる。ちょっとした日々の不便を解消できない。そもそも、コロナ禍で人に会いにくい──。高齢になるほど、日常のあちこちに小さな不安の種が増える。周囲の人々との支え合いで解消している人たちに話を聞いた。3組目は団地コミュニティカフェの草分けともいわれる西京極大門ハイツの現在です。(取材・文=古川美穂)
知っている人の生活音はそれほど気に障らない
団地コミュニティカフェの草分けともいわれる西京極大門ハイツは、京都市右京区にある。敷地内にある集会所の有効活用とマンション住民の親睦をかねて「日曜喫茶」をオープン。淹れたてのコーヒーとトーストにゆで卵がついて100円。原価は70円なので差額をプールし、年に一度の避難訓練時に無料喫茶を開催している。
日曜喫茶は住民以外も利用でき、わざわざバスに乗ってやってくる人までいるほどファンが多い(注・現在はコロナ感染防止のため居住者のみ利用可)。スタッフは住人の有志が交替で受け持つ。そのほかにもマンション内でのイベントや取り組みを通じて、住民同士の交流が行われてきた。
大門ハイツは築46年。今は全190戸のうち70戸が60歳以上の一人住まいだ。管理組合法人の理事、佐藤芳雄さんはこう語る。
「このマンションは苦情やトラブルがほとんどないのですが、それは互いの顔が見えるからだと思います。上下左右に赤の他人が住んでいれば必ず騒音の問題は起きる。でも、自分の子どもが2階でドタバタしていてもあまり気にならないように、知っている人の生活音はそれほど気に障らない。集合住宅では、どんな人がどんな状態で暮らしているか、互いにわかる関係作りが非常に大切なんです」