「物ごとは《すぐ解決しよう》という勢いで臨まなくちゃ、ずっと解決できないままになってしまうんですよ」(加藤さん)

年に一度の話し合いで、財産を「見える化」

渡辺 うちの親にもしものことがあったら、きっと私は山形にいる弟に頼る一方だと思います。登紀子さんご自身は、終活を始めていますか?

加藤 少しずつしてきましたよ。そう考えるのは理由があってね。ほら、年齢とともに物ごとのサイクルが短くなっているでしょう。仕事にしても、私生活にしても。

渡辺 わかります。年々時間が経つのが速くなって、「えっ、もう1日が終わる!」と焦ることばかり。

加藤 昨日あんなに洗濯したのにもうこんなに洗濯物が溜まっちゃったとか、コンサートが終わったら、休む間もなく次の準備に取りかかるとか。ひとつ片づけたら、すぐ次がやってきてしまう。

渡辺 いくらやってもキリがない。

加藤 子育てをしていると、特に感じるのよ。それで、学んだの。「また一からやるのか」とか「まだ終わらない」とうんざりするのをやめて、毎日少しずつ、ちゃんと終わらせることだけに集中すればいいって。

渡辺 「少しずつちゃんと終わらせる」かあ。そんなふうに考えたこともなかった。

加藤 終活も同じだと思うのよ。一気にやろうとすると気が重くなるから、小分けにして、目の前のことからとにかく手をつける。物ごとは「すぐ解決しよう」という勢いで臨まなくちゃ、ずっと解決できないままになってしまうんですよ。

渡辺 ほとんどできていない身には、耳が痛い。具体的には、どんなことをなさっているのですか。

加藤 ここ10年くらい、知人にアドバイスされて、「財産の見える化」をしています。うちは引っ越し貧乏で、あちこち移り住んできたから大した価値はないけれど、家がいくつか残っていて。年に一度、不動産を含めた財産目録を表にして娘三人に見せ、どのように分けるか相談しています。いわば財産分与の予行演習。年度替わりとか年始とか、家族が集まる機会にやっているの。

渡辺 娘さんたちとそういう話し合いが季節行事のようにできるのは、心強いですね。私は子どもがいないので、死後のことを託す相手がいないんです。弟に「私に何かあったら、あとはお願い」と言ったら、「姉ちゃんのほうが長生きするだろう」と断られちゃったし。