加藤登紀子さん(左)と渡辺えりさん(右)(撮影:藤澤靖子)
歌をご縁に交流が始まった、加藤登紀子さんと渡辺えりさん。年齢が一回り違う二人は、それぞれ終活に着手しています。両親と夫を看取り、この先を見据えて娘たちと相談している加藤さんと、ひとり暮らしで課題が山積みの渡辺さん。物の整理から終の棲家、理想の最期まで聞いてみると… (構成=村瀬素子 撮影=藤澤靖子)

終活の話をするには準備や策が必要

加藤 えりさんとは、2020年の、浅川マキさんの追悼コンサートで出会って、すっかり意気投合したのよね。この間も、私がやっているYouTubeのライブ配信に出てくださって。

渡辺 歌手として歌わせていただき、お世話になりました。そのときのトークでも盛り上がりましたけど、私と登紀子さんは、ともにひつじ年のやぎ座。

加藤 一回り離れているのに、なぜか同級生みたいな感覚がある(笑)。いまは、ご両親の介護をしていらっしゃるとか。

渡辺 私が介護しているわけではないんです。山形の介護施設にいるので、月に一度両親の好物を持って会いに行く程度なのですが。二人とも認知症の症状があり、もう母は、私が自分の娘だということもわからない。父のほうはまだ症状が軽いものの、声が出なくなってきて、自力で歩けません。

加藤 ご両親は同じ施設にいらっしゃるの?

渡辺 ええ。でも要介護度が違うので、部屋は別々です。仕方のないことですけど、施設では起床、食事、入浴、就寝などタイムスケジュールがきっちり決められていて。元気だったころ、父は夜中まで『水戸黄門』の再放送を見たり、母も夏場は下着のまま畳に寝転がったり、自由気ままに暮らしていたんです。それなのに制約が多い生活になってしまい、ここが終の棲家になるかと思うとかわいそうで。自分が同じ状況に置かれたら、絶対イヤだなあ……と。

加藤 親を見ていると、自分の行く末に思いを巡らせてしまいますよね。私は父、母、夫(藤本敏夫さん)を見送った経験があります。夫は肝臓がんで4年の闘病の末に亡くなりました。本人の希望で延命治療はせず、最期まで意識をしっかり保って逝ったので、私もそうありたいと思うわね。