父の突然死、後に問題が山積み

渡辺 登紀子さんは強い。私は身内の死を想像しただけで悲しくなってしまう。一日でも長く生きてほしいと思うから、本人の意思とか尊重できるかな。

加藤 ただ、私の両親は、終活と呼べるようなことは、取り立ててしていなかったのよ。特に20年前に亡くなった父の場合は、突然のことでしたから。82歳のとき、川に転落して亡くなったんです。

渡辺 当時は、さぞショックを受けられたのでは。

加藤 もちろん、驚いたわ。でもお医者様によれば、落ちる直前に脳出血で亡くなっていたので、痛みも苦痛もなかったんじゃないかと。身内からすれば、うらやましいくらいみごとな死で、姉たちと「お父ちゃんらしいね」って笑っちゃったくらい。

渡辺 明るいなあ。愛されていらしたんですね。

加藤 でも、死後に残された問題は山積みだった。特にお金に関する処理が大変でね。亡くなったのは、経営するロシア料理店のスタッフたちの給料日前。葬儀を終えたその日のうちにきょうだい三人で今後のことを話して、次の社長を姉に引き受けてもらうことを決めて……。無事にお給料を払うことができたときはホッとしました。

渡辺 すぐにきょうだいで連携されて、すばらしいですね。

加藤 父が自分の年齢を考えて、早めに相続の方針を決めてくれていたら、あんな苦労もしなかったでしょう。ただ夫もそうだったけれど、本人は最後まで生きる気でいるから、そういう人に終活の話を切り出すには入念な準備や策が必要ね。父のときは困難にぶちあたったことで、かえってきょうだい三人が力を合わせる機会が持てた、ともいえる。これはこれでよかったと思うしかないわね。