事前に依頼をして利用できる契約

寿命が延びたことにより、体の自由が利かなくなったり、認知症になったりしながらも生きる可能性は高まっています。その場合に利用できるのが、生きている間のお金や生活の世話を依頼する「任意後見契約」「任意代理契約」です。

任意後見契約」は、認知症などで自分の判断能力が低下した時に、あらかじめ依頼した、信頼できる友人、知人や弁護士などを任意後見受任者として財産管理やさまざまな手続きをしてもらうために結ぶ契約です。この制度では、依頼する内容や財産管理の方法などを記した契約書を、公正証書として公証役場で作成しておく必要があります。

実際に判断能力が低下したら、本人や親族、任意後見受任者が家庭裁判所に申し立てをします。任意後見受任者を監督する弁護士、司法書士、社会福祉士などの任意後見監督人を裁判所が選任し、後見開始です。

一方、「任意代理契約」は、判断能力は低下していないものの、体の自由が利かなくなったり、煩雑な手続きや重要書類の管理を自分で行う自信が持てなくなったりした時に、信頼できる誰かに代理で行ってもらうための契約です。こちらの契約書は公正証書である必要はありませんが、家族以外を受任者にする場合には、公正証書で契約するのが一般的です。

判断能力があるうちは「任意代理契約」、低下してきたら「任意後見契約」と、二段構えで同時に契約しておくのが理想でしょう。

これら2つは本人が亡くなるまでの契約です。死後の葬儀や遺品整理、役所関係の手続きについては、別途「死後事務委任契約」を結ぶ必要があります。遺言書に葬儀や死後の希望を書こうとする人もいますが、遺言書で法的な効力を持つのは、財産分与や処分方法に関する内容のみ。書いたところで遺言執行人にはそれを実行する義務はありません。

次のページに3つの契約にかかる費用の目安を記しました。参考になさってください。