入院前、苦手な後輩から1件のLINEが届いた
疲れやすくてふさぎがちだった会社員の香苗さん(49歳・仮名=以下同)は、3年ほど前に中度の抑うつ神経症と診断され、長期休職を余儀なくされた。「1、2ヵ月で復職できるだろう」と高を括っていたが、摂食障害の一種、神経性痩せ症を併発。医師から「放置すれば余命3ヵ月」と宣告を受け、入院することに。
入院の2週間前、かねて約束していた6人の同僚との食事会に参加した。彼女たちとは所属する部署が違っても、3ヵ月に1度は集まる20年来の仲だ。香苗さんは、近々入院する旨を正直に伝えた。
「みんなピンと来なかったみたい。当時、体重30kgとかなり痩せていたけど、私がジムで鍛えていることを知っていたし、食欲は健在でしたから。『お見舞い、行くね』と軽い反応でした」
ところが、5歳年下の後輩・有希さんだけは違った。食事会の後、LINEで「入院する日、会社を休んでつき添います」と連絡をくれたのだ。いつもボーイッシュな服装に身を包みアクティブな彼女は、インドア派の香苗さんにとって少々苦手なタイプ。1対1で会う機会もなかった彼女からの申し出に、戸惑いを隠せなかった。
「とはいえ、独身なので頼れる家族もいないし、初めての入院で心細かった。大袈裟にしたくなくて病気のことは旧友にも伝えていなかったので、素直に彼女を頼らせていただこう、と。でも、彼女が所属する部署は忙しい。申し訳ないと伝えたら、『全然大丈夫ですよ!』と、あっけらかんとしている。スッと肩の力が抜けました」