更衣室で搾乳した母乳を冷凍し

出世に関しても、子どもを持つと厳しい状況に置かれることになる。陸自では、出世するためには指揮幕僚課程と呼ばれる課程を受験し、合格することが一般的なコースとなっている。

全4回の受験機会があるが、ある者は「1回目で合格することが重要。受験期を育休期間に被らせたくない。それまでに、つまり20代のうちに子どもができなければ、子どもを産むことを諦めようと思っている」と話す。

反対に海上のある者は、「出世のためには船でいくつかの配置を経験する必要がある。でもそれを全部経験すると30歳を超える。30歳を過ぎるまで子どもを産むなということなんだろうか」と不安を漏らす。

出産後、すぐに現場復帰する者もいる。

ある者は、大学院在学中に出産し、産後1カ月で復帰。「母乳が止まらなくて大学のトイレの壁を母乳で汚した」と振り返る。またある者も、「別居婚だったので、出産後に旦那の部隊がある地域に行かせてもらうためには3カ月で復帰するしかなかった。保育園は認可外に預けるしか選択肢はなく、更衣室で搾乳した母乳を冷凍して子どもにあげていた」という。

出産後、すぐに現場復帰する必要に迫られて(写真提供:写真AC)

念のため補足しておくと、近年は大抵の女性は1年程度の育休を取る。

四十期代前半の女子は「育休制度も大分使える雰囲気にはなってきている。いろんな制度も拡充されていて、普通に昇任もできているから、その点は歴史を重ねてきただけのことはある」と評価する。制度的に1年以上取ることももちろん可能だが、周囲を見渡すと「初級幹部のうちにそんなに現場を離れてどうするの」という感覚は少なからずある。

ただでさえ子育てと仕事の両立は難しい上、理解のない上司も少なからずいるという。

やはり上の期ほど「当時は仕事に子どもを絡めるのは許されないことだったし、しかも幹部だから余計に許されなかった」と振り返るが、取材する限り現在でも決してなくなってはいない。

取材をしていると、「その部隊で出産して育休を取った女性幹部は私が初めてだった」というケースもいくつかあった。そのため、「男性も勝手が分からなかったんだろう。結果としてはいろいろ調整してくれた」と擁護する声もあった。