子どもを持つことへの逡巡
さらに女性自衛官の場合、結婚相手が自衛官であるケースは多い。独身であればまだなんとかなったとしても、結婚し、家庭を持つとさらに難しくなる。
幹部自衛官は転勤や入校、長期の訓練など、家を空ける機会がかなり多い。結婚した自衛官同士が一緒に暮らせるという保証はどこにもない。ある者は「ほとんど別居になることは、結婚したときから想定はしていた」と話す。
陸自同士であればまだ駐屯地も多く、市街地にほど近い場所にあることもあるが、海自や空自の基地は数が少ない上、特に空自の基地は、基本的に不便な土地にある。
また海自の場合には、どちらかが船に乗ってしまえば何カ月も帰ってこられない。そういう面で、勤務の厳しさで言えば海自の船乗りが「別格」という声があった。
ある現役の海自幹部は「若いうちは男性と同じように船に乗りたいと熱望していた子も、『結婚・出産して仕事と両立できるのか』という問題が自分のものになったとき、『船はこれ以上は無理だ』と言うケースが多い」と指摘する。
特に、両立の問題は子どもを持ったとき、より顕著となる。中には、「私は『女であること』は自衛官としてなんの影響もなかったけど、『母親であること』はやっぱり影響があった」と話す者もいた。
そもそも子どもを持つことを逡巡することもある。
「子どもがほしいけど、今いろいろ学ばせてもらっているところで、今できると嫌な顔をされることが目に見えている」
「子どもができたら怒られることは分かってたし、実際怒られた。だけどもうつくっちゃったもん勝ち、と覚悟を決めないとつくれなかった」
これらは一般社会では明らかに「マタハラ」と呼ばれる行為に当たると思うが、自衛隊ではまだ撲滅には至っていない。