女性の先輩からも組織からも寄り添ってはもらえない
また、「同じ女性なら気持ちが分かるか」といえば、必ずしもそうとは言えないようだ。
「子どもがいるので入校することを延期できないか悩んでいると、女性の先輩から『甘え』だとか『子どもも連れていけば』と言われた。転勤ではないので住民票も移せず、保育園にも入れないのに」
「私より上の期はみんな出産後もすぐ復職したり、部隊に迷惑がかからないように自分のライフプランを削ってやっていた人たちが結構多かったから、私の苦しみを理解はしつつも、寄り添ってはもらえないことがあった」
仕事の時間に制約が生まれることによって、組織から適正な評価を受けられていないと感じる者もいた。
「自衛官は生産性の評価が難しい、というより、していない。こなせる業務を超えて仕事がアサインされた結果、残業してでもこなす人が評価されるので、家庭の時間を確保しないといけない人が昼休みを削って必死に仕事をしても、アウトプットの評価ではかなわなくなってしまうことが多い」
「入校中、『土日の訓練や授業に参加できないなら休んでもいい』とは言われたが、『評価できないから、その訓練はゼロ点になるけど』と言われた」
元々優秀な人ほど、この壁にぶつかったときに心苦しく、出世を諦めたり、外の世界に目を向ける要因になる。「元々は出世がしたかった。上でしか見られない光景があると思ってた。でも、もう出世したいとも思わなくなった」と、熱量が下がった同期を私も目の当たりにしている。ある者はこう述べる。
「自衛隊ではしょっちゅう講話があって偉い人の話を聞く機会がある。その中で『自衛隊は尊い仕事。君たちはすぐに動けるのか。動けるのが幹部だ』と言われた。今私は子どもがいてすぐには動けない。不適合者だと突き付けられたに等しい」