「親の支援がないと無理」

実際に子どもを育てながら仕事をしている女性幹部に両立の秘訣を聞くと、全員が「周囲の環境に恵まれた」と話した。

「周りが『お子さんのお迎えの時間でしょ』と言ってくれた」

「自分の部隊も、同じく幹部自衛官である夫の部隊も人事上の配慮をしてくれた。自分がどうしても入校しなくちゃいけないときは、船に乗っていた夫を陸上勤務にしてくれた」

「仕事面ではかなり考慮してもらって、フレックスタイムも認められている。めちゃくちゃ周りの方に助けてもらっていて、両立しているというより、支えてもらっている」

子育てのための具体的な手段としては、「親の支援がないと無理」と話す者は多い。入校などに合わせて地元から親を呼んだり、海外にいた親を呼び寄せたり、転勤ごとに親を帯同させたり……、中には「夫の親に自分が単身赴任するたびについてきてもらっている」というケースもある。

激務と呼ばれる部署にいる現役女性幹部はこう憤る。

「今は『何かあったら親を呼ぶ』というのが前提になっていることがおかしい。自分がやってみて、子育てと仕事の両立ができなかったら、それを上司や部下に見せなきゃだめだし、できるんだったら『こうやってやりました』という先駆者に自分がなる。このままだったら、『親に来てもらえばいいじゃん』と言い始める上司ばかりになる」

「何かあれば親を呼ぶ」が前提に(写真提供:写真AC)

そのほかの手段としては、ファミリーサポートセンターなど、地域の資源を活用している者も複数いた。中には、「有事の際には近所の人に子どもを見てもらうようお願いしている」と話す者もいた。

幹部自衛官としての激務をこなしながら、周囲への感謝を口にして子育てを行う彼女たちに、私は敬服の念を抱かざるを得ない。