「大人は信用できない。ただし一部を除いて」
児相の判断で里親委託を解除した結果、中3になっていた彼は、教護院へ入ることに。やよいさんは問題児がいなくなりほっとすると思っていたが、K君はどうしているのか気になって仕方がない。彼の口癖は「大人はみんな信用できない」。ここで見放したら、彼は誰も信用できなくなると感じたやよいさんは「あなたを心配している人がここにいる」と伝えたくて、ハガキを送り始めた。
K君は「この人はなぜここまでしてくれるのか」と疑問に思っただろう。だが、やよいさんは月に1回のハガキでほめたり元気づけたり。次第に心を許すようになったK君は、中学の修学旅行の土産に「いつもきれいなおかあさんガンバッテ!」と印字された湯みを送ってきた。やがて高1になったK君を再び青葉家で預かることに。時を経て彼にも「大人は信用できない。ただし一部を除いて」という思いが芽生えたのだ。
以来、青葉家では中高生の男子ばかりを預かってきたが、2階の4部屋が埋まるとにぎやかだ。一升炊きの炊飯器はフル稼働、里子同士けんかもするが、それでも全員で食卓を囲むのがこの家の習わし。食後に里子は連れ立って近所の銭湯に行き、そこでいろいろ語り合う。
「新しく来た子に〈さあ話してごらん〉と言っても答えてくれませんが、子どもたち同士で話したことを教えてくれる子もいます。だから複数預かるほうがいいみたい」
預かりは数日間から数ヵ月、数年までとさまざまだ。その間、多くの子は近所にある地元の公立校に通うため、新しい学校で少しでも生活がしやすいようにと、やよいさんは積極的にPTA役員を引き受けてきた。長男の頃から数えると、約30年間も役員を務めたことになる。
「最近は、預かる期間が短い子が多くてPTA役員は卒業しました(笑)。以前はやんちゃで元気な子ばかりだったから食事を作って学校に送り出してあげればよかったのですが、近頃は心に傷を抱えていたり、精神科の薬を服用する子も多くなりました。子どもが抱えるものが、より深刻になっているのかもしれません」とやよいさん。