テクノロジーはみんなの人生の幸福のために

自分では手を振ることができないぶん、オリヒメでたくさん手を振っている、と藤田さんは言う。

「自宅で仕事中の姿を見て、娘がたまに『お母さん、かっこいい』と言ってくれて。普段は娘に頼って『ありがとう、ごめんね』ばかりの自分なんですが、そういう時は母親として背中を見せられたというか、誇らしい気持ちになります」

藤田さんにカフェでの印象的な出来事について聞くと、「すべてのお客様が私たちにとっては大切な人です。そのなかでもこの常設カフェができる前の実験カフェの時、『私も将来、分身ロボットカフェの店員さんになりたい』と言ってくれた小学生の女の子の言葉は忘れられません。自分が誰かの夢とつながれたことが嬉しくて」。

DAWNで働いている姿が目に留まり、オリヒメごとスカウトされるパイロットの人たちもいる。企業の受付やお店、自治体の建物にあるカフェなど、分身ロボットが活躍する場面は増加中だ。

「人生のほとんどの出来事や感動は、人と人との間に生まれる。それに気づいた時、私はAIではなく分身ロボットを作ろうと思ったのです」と吉藤さんは言う。

私たちは誰もが老い、病み、動けなくなり、やがて死ぬ。だが命ある限り、より豊かな時間を過ごせるよう生み出されたオリヒメ。本来、テクノロジーは生産性や合理化のためではなく、みんなの人生の幸福のために存在するのではないだろうか。