ハムスターの老いの姿を見て、将来を見ている気持ちに

1年くらい経ち活発な時期を過ぎると、老いてゆくのがはっきりとわかった。全身に何かと小さな支障が出て、じっとしている時間が増える。病院に連れて行き薬を出してもらっても、完治はせず、つらそうにしているのをじっと見守るしかない。

それでも、いくつもの病気を乗り越えたので、もしかしたら3年、いや5年生きてくれるかもと勝手な望みを抱いたが、やはり2年とちょっとでサムは小さな星になってしまった。

最後に大きく彼の体力を奪ったのは、ハムスターにありがちな腫瘍だ。良性であっても、小さな体にとってあまりにも大きい塊は、彼の衰弱を加速させ、食欲、行動力を奪い、見る間に痩せこけていった。

日ごとに肥大する腫瘍はウズラの卵ほどになり、まともに歩けなくなっていく。体が熱いのか、ケージに入れた小さな大理石のプレートの上で全身で息をし、ぐったりしているばかりだった。

こまめにブラッシングしたあの滑らかで美しい薄グレーの体毛はところどころ抜け落ち、堅い木の実を割る長くて頑丈な2本の前歯も、いつの間にか折れて短くなっている。

ハムスターの老いの姿を目の当たりにし、私は自分の将来を見ている気持ちになった。成長し、活動し、幾多の病を経て、終末を迎えている。時間は短くとも、その過程は人と何ら変わらないではないか。

動物には自殺という概念はなく、自らの生に起こっているすべてをひたすら受け入れる。恐れることなく、すべてを享受した先には永遠の喜びと安息が待っているのかもしれない。私はサムに残された短い時間を見つめるなかで、自分の生き方を考えるようになっていった。