超高齢化し、労働人口が減る一方の日本社会で、外国人労働者たちはすでになくてはならない存在となっている。技能実習制度を使って来日した若者たちも多いが、今般のコロナ禍では、日本人同様、彼らも苦境に立たされた。在日外国人労働者数として最多のベトナム人も例外ではない。困窮する彼らの衣食住を支援してきた埼玉県のベトナム寺院で現状を取材した。(取材・文:樋田敦子 撮影:本社写真部)
ベトナムの家族に楽をさせたい
「日本人の同僚は重たいものは持たない、足場の上での危険な仕事はしない。いつも技能実習生まかせでした。毎日の仕事が大変で、寂しくて、早くベトナムに帰りたいと、ずっと思っていました」
そう話すのは、埼玉県本庄市にある在日ベトナム仏教信者会(以下、信者会)の本山・大恩寺に身を寄せている男性、マイ・バン・リンさん(仮名・24歳)だ。解体業を営む企業で働いていたが、コロナ禍による経営不振のため2021年5月に解雇された。仕事がない、お金がない、住む家がないと、住職の尼僧ティック・タム・チーさん(43歳)を頼って寺にやってきた。ここで帰国の飛行機に乗れる日を待っている。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、初めての緊急事態宣言が発出される直前の20年3月に、リンさんは来日。バイク修理の仕事を望んだがかなわず、埼玉県内にある解体業の会社で働きだす。そこには「日本でお金を稼いで、ベトナムの家族に楽をさせてあげたい」との思いがあった。
そもそも技能実習制度は、日本の技能をアジア各国に持ち帰って経済発展を担う「人づくり」を目的として始まったもので、当初は企業が単独で外国人を受け入れ始めた。93年に制度化され、労働の担い手として、農協や商工会などの団体が監理する形で実習生の受け入れを開始。
日本での実習を希望する人は、その国の「送り出し機関」と呼ばれる民間のあっせん企業に大金を支払って出国する。その実習生を日本の監理団体が受け入れ、傘下の企業で実習させる仕組みだ。最長で5年の日本在留が認められている。現在の受け入れの主流はこの団体監理型だ。