秋篠宮家の次女佳子さま(右)、長男悠仁さま(左)写真提供:読売新聞社
いまだ議論が続く皇位継承問題。愛子さま、悠仁さまの将来はどうなるのでしょうか。歴史学者の小田部雄次さん、エッセイストの辛酸なめ子さん、皇室ジャーナリストの山下晋司さんが今の皇室をめぐるさまざまな課題について語り合います(構成=篠藤ゆり)

愛子さまの天皇即位は?ご結婚相手は?揺らぐ皇室の継承問題。眞子さん結婚の影響も〈前編〉からつづく

昭和天皇だけが受けられた特別な教育

辛酸 悠仁さまは、槍ヶ岳などに登っていらっしゃいますね。それを帝王学だ、と書いている記事がありました。

山下 年配の方がイメージしている「帝王学」とは、昭和天皇が受けてこられたような教育のことなのかなと感じます。当時は御学問所という特別な教育機関があり、そこに優秀な先生方が集まって、歴史や軍事などについてご進講したわけです。でも、そういうカリキュラムを修了されたのは、昭和天皇だけです。

小田部 近代の天皇は、江戸幕府から政権を奉還されて、立場を突然決められてしまったようなところがあります。明治天皇は14歳で即位していますし、じっくり教育を受けている余裕もなかったでしょう。

山下 大正天皇はお身体が弱かったので、勉強より健康だと方針を変えた。昭和天皇は、政府や軍部の希望にかなうような教育を受けてこられた。その次は上皇陛下ですが、終戦時は学習院初等科6年生で、その後も特別な教育機関ではなく、一般の生徒と同じ学習院に通われた。

辛酸 じゃあ、帝王学というのは都市伝説みたいなものですか。

山下 ご自身の置かれた立場や宮中祭祀などへの使命感や責任感といった精神的な部分を引き継ぐことを、今は大事にしているのではないでしょうか。

小田部 天皇陛下は、水の研究をなさっています。世界に目を向け、水害や水がなくて苦しんでいる人たちをどうやって助けるか、という内容です。私は陛下が書かれた論文やご著書を読み、これぞまさしく治世の要を学ぶ帝王学ではないかと感じました。海外で陛下の研究は高く評価されています。深い知性とご業績があるからこそ、世界が日本の皇室を好意的に見てくれている。

近代の天皇は、江戸幕府から政権を奉還されて、立場を突然決められてしまったようなところがあります(小田部さん)写真提供:読売新聞社