機械に「似ていない」と言われる時代がくる?
金田一 とんでもない耳のよさですよ。きっと彼女たちは、僕たち3人とも声がわかると思う。以前、盲学校に行った時、廊下を歩く音だけでどの先生がくるかがわかるって言ってた。僕らはなまじ見えるばっかりに、「わかってない」ことが多いんじゃないかな。
清水 普段、五感を研ぎ澄ますということがないから。
金田一 そもそも僕は人の顔が覚えられないんですよ。だから、顔を判別して記憶してくれるアプリとかあればいいのに、と思う。
清水 じゃあ映画を観るの、大変でしょう。
金田一 一番つらいのは戦争ものですね。みんな同じ格好してるじゃない。『プラトーン』なんかほんと困る。いいもんと悪いもんの区別がつかない。
小林 iPhoneのSiri(音声認識アシスタント)は、持ち主の声を聴き分けられるようになりましたよね。
清水 そのうち、機械に「このモノマネは似ていない」とか言われる時代がくるのかなあ。そこをクリアしたら、立派なモノマネ芸人になれるってこと?
金田一 いや、清水さんにやすやすクリアされたら、セキュリティの用をなさない。陽水さんもユーミンさんも困っちゃう。(笑)
清水 声って感情が表れるものだと思うんだけど、女優さんって感情の込め方の度合いが大変そう。「もっと気持ちを込めてください」って言われるぶんにはいいけど、「もう少し抑え気味に」と注文されたら、ちょっと恥ずかしくならない? 懸命に演じたのが裏目に出ちゃったっていう。
小林 そうですね。私は言われた記憶ないけど、言われている人を見たことはある。(笑)
金田一 舞台だと、かなり感情を前面に出してお芝居しますよね。観ていてちょっと恥ずかしくなっちゃうのだけど。
小林 ところが、今はマイクをつけているので、わりと映画やテレビみたいな感じで淡々とセリフを言う人が多くなりましたよ。こんなに抑え気味なのは稽古だからかな、と思っていたら、本番でもおんなじだったりして。「腹から声を出せ」っていう時代に育った私だけ、朗々としてて恥ずかしくなったことあります。(笑)
金田一 そりゃ目立ちそうだ。
小林 囁くところなんか、本当に息でしゃべるんですよ。こっちが「聞こえるかな?」ってハラハラするくらい。
清水 ところで、ハードな役をやった時って、引きずるもの?
小林 私は、引きずらないようにするから、引きずらないです。
清水 そうなんだ。役になりきるために、自己催眠にかかるというか、小林聡美じゃなくなる瞬間、「自分で自分を騙す」みたいな瞬間があるんじゃないかと思って。だって演技って、モノマネじゃないから。(笑)
小林 役者にもいろんなタイプがあると思うんだけど、私はそこまで意識した役作りはしないなあ。