撮影:木村直軌
清水ミチコさんもそうですが、エッセイの名手として知られる小林聡美さん。その感性や言葉の紡ぎ方の秘密を探るべく、日本語の“先生”である金田一秀穂さんをお呼びした今回の鼎談。初対面だったゲストのふたりですが、話は思わぬほうへと盛り上がり......

親善大使になりました

金田一 小林さんで印象に残っている映画は、フィンランドに日本食レストランを開く女性を描いた『かもめ食堂』。あれはよかったですよ。

小林 まあ、ありがとうございます。もう公開から10年以上経つんですよね。当時のヘルシンキは、まだのんびりしたところでした。

清水 撮影期間中、幸せだったでしょう。実は私、去年の夏休みに旅行で行ったの。いいところだった。食べ物もおいしいしね。

小林 それはよかったです。ここ数年でますますおいしくなっているそうですよ。

金田一 フィンランドって、世界一臭い缶詰があるんでしたっけ。

小林 ニシンを発酵させたシュールストレミングのことですか。あれはね、お隣のスウェーデンです。フィンランドの食べ物って、サーモンとかミートボールとか……。

清水 旅行中、英語版の食べログを使ったら安くておいしいお店をいくらでも検索できて、すごく便利だった。今の人間は幸せだね。

小林 ミッちゃんたちは、サウナに入ったの?

清水 入らなかった。向こうのサウナはやっぱりいいもの?

小林 私は田舎のほうでスモークサウナに入ったんですけど、すごくよかったですよ。薪を燃やす原始的なタイプのサウナ。熱くなった石にジューッて水をかけた時の蒸気も柔らかい感じがして。

金田一 北欧だと、サウナのあとに冷たい湖に飛び込んだりするじゃないですか。あんなことして、心臓に悪くないんですか?

小林 聞いた話ですけど、脳にはとってもいいらしいですよ。サウナと冷水浴を繰り返すことで、エンドルフィンがバーッと出るそうです。フィンランドは夜が長いのでうつっぽくなる人が多いのだけど、それで解消するんですって。

清水 なるほど。サウナはメンタル的にも北欧ならではのものなんだね。

小林 撮影中、現地に友達もできたので、その後は気軽に行けるようになりましたね。映画が公開されてからずいぶん経つんですけど、私、フィンランド大使館から「親善大使」に選ばれたんです。今年は、日本と外交関係が樹立されてちょうど100周年ということで。

金田一 すごいじゃないですか!

小林 ちゃんと名刺もあるんですよ。どうぞ。