80年代ってすごい時代

内田監督は実際の新人時代「はいカット! もう1回!」と言う時、皆から向けられる「射るような視線」に胃がキリキリ痛んだそうですが、演じるぶんにはとてもやりがいがありましたし、映画監督という仕事に魅了されました。私も無責任に作ることができるならば「映画監督やってみたい!」と思いましたね(笑)。でも実際はすべてを調整しながらやらなければいけないのが映画監督だと思うので、無責任に「やりたい!」なんて言うことは出来ないですね。

80年代って、すごい時代ですよね。みんなが熱に浮かされたようにがむしゃらで、欲望に素直だった時代。映画は実在の歴史ある東映の撮影所で撮影されました。キャスト陣のファッションからカメラなどの機材、セット全てが80年代で、完璧に用意されていたので、80年代の世界にどっぷり浸ることができました。贅沢な時間でしたね。でも現実の80年代は、パワハラや暴力が横行していたりして、特に女性は生きづらかったはずです。花子の役作りで、私はしっかりした女性を思い描いていたのですが、内田監督には「もっと弱くてウジウジしていていいんだ」と言われました。それが、新人の頃の内田監督だったそうです。もちろん最後まで打たれっぱなしではないので、花子の鮮やかな変身ぶりを楽しみにしていただきたいと思います。

あの時代に、花子のような女性監督がコテンパンにされながら諦めず戦ったからこそ、今の映画業界があると思います。作品を通して、あの頃、頑張ってきた先輩たちに対して改めて感謝の気持ちが生まれました。私も、20代の頃、怒号の飛び交う時代を少しだけ経験しています。劇団☆新感線によんでいただき、いのうえひでのりさんにご指導いただいた時は、毎日毎日泣いて泣いて現場に通っていました。いのうえさんが私を舞台の世界に引き入れてくださり、たくさん叱って育ててくれて。もちろん、そこに、愛情もありました。この先の人生でここまで叱られることなんてないだろうな、と心のどこかで思いながら、できるようになってやる! と、逆境を越える力も身に付けてました。

「20代の頃、怒号の飛び交う時代を少しだけ経験しています」