2019年7月23日号

[特集]
〈パート主婦900万人のこれから〉
「非正規」時代  の幸福論

パートタイム、契約、派遣、嘱託など「非正規」雇用で働く女性のうち、大部分を占めるパートタイムの主婦層は900万人を超えます。得られるお金と働ける時間のバランス、家事や介護や子育てとの両立、職場で感じる格差や人間関係の難しさ……いくつもの事情があるなかで、今の働き方にどれぐらい満足し、どんな不安を感じますか。非正規で働く女性たちのリアルな思いに迫ります

●注目記事●

 

〈かけもち、副業が、これからのあたりまえ〉
その時、「主婦のスキル」と 「巻き込む力」が 強みになる
雨宮処凛×荻原博子×平賀充記

アンケートからも見えてきた、非正規雇用で働く女性たちのホンネ。経済評論家の荻原博子さん、格差や貧困問題の取材を続ける雨宮処凛さん、シンクタンクで職場の現状を調査・レポートしている平賀充記さんに、働く女性たちの現場を語ってもらいました

働く動機は違っても待遇の格差に不満が

荻原 今回、アンケートの結果を見て改めて思ったのは、ひとくちに「非正規」と言っても、ずいぶんいろいろな方がいるなあ、と。あえて選ぶ人もいれば、やむなくそうなっている人もいる。働く動機もそれぞれ。ただ皆さん共通して、賃金に満足していないのがよくわかりますね。

平賀 今、働いている人の約4割が非正規労働者ですが、その「負」は3つあると言われています。①雇用が不安定でいつ契約が終了するかわからない、②正社員に比べて待遇が悪い、③大事な仕事を任せてもらえずキャリアが積み上がらない。この3点が、不満としてアンケート結果につまっている。

雨宮 回答者は既婚の方が多いですが、既婚と未婚とでまったく状況が違いますよね。この「すでに40代の私は、いくら経験を積んでもダメ。後から入った若い人が次々と正社員になっていくのが不満です」という嘆きは深刻。というのも、誌面には出されていませんが、プロフィールによればこの方は未婚なんですよね。非正規労働の女性の年収は平均150万。年収150万だと貧困ラインを30万ほど超えている程度です。これで自立生活をしている人はかなり大変。そういう人と、主婦でパートをしていて、夫の収入がある人では、分けて考える必要があります。

平賀 はい。主婦パートやシングル女性だけでなく、子育て世代かシニア世代かなどでも違ってくる。

雨宮 立場の違いによって、パートで働く人同士でも、考え方はいろいろです。女性中心の、例えばコールセンターみたいなところだと、経済的に安定している主婦の方と、非正規で自立生活をしている人がいるので、職場環境に問題があっても、組合でまとまって何かを要求するという発想が持てない。かたや賃上げしてもらいたいけれど、かたや年収130万未満に収めたい、と。

荻原 生活状況によって、働く動機も意味合いもまったく違いますからね。

雨宮 それともう一点、回答でびっくりしたのが、「70代でも雇ってくれた。朝10時までなので、家事もゆっくりできるのはありがたい」という方。回答からは、家計の足しで働いているのか、やりがい目的で働いているのか見えませんが、70代でこの働き方をしなくてはいけないとしたら、年金制度や高齢者の貧困の問題もあるなと感じました。
(一部抜粋)


他にも、 女優の江口のりこさんの「2万円だけ持って上京、 不思議と不安はなかった」、小島貴子さん、今野晴貴さんの「〈パート人生相談〉 シニア世代の働く悩み、 職場トラブル、解決します!」、レンタルなんもしない人さんの「収入なし、ストレスゼロ。〝レンタルなんもしない人〟やってます」などが掲載されています!

目次・購入

 

[第二特集]
「チーム家族」で 支えるがん

がんと診断されると、患者になった人とその家族は、たくさんの意思決定を迫られます。治療が長くなれば、家族も同じ時間、病気と向き合い続けることに。患者の不安を前に家族ができることは少ないかもしれません。でも、家族のそれぞれが役割をもってできることはあるはず。経験者の知恵や専門家の言葉から道を探ります

●注目記事●

 

〈2度の再発、5度の手術を経ていま〉
言葉よりもそばにいてくれるのが救いだった
生稲晃子

乳がんを発症してから4年8ヵ月の間、公表をせずに、治療をしながら仕事も育児も続けていた生稲晃子さん。外では笑顔でいる反面、内心は落ち込むこともあったそう。いちばん近くにいる家族はどんな存在だったのでしょうか

区の健診を行きそびれ、人間ドックに行ってみたら

最初に告知を受けてから、8年あまりが過ぎました。現在もホルモン治療を続行中ですが、おかげさまで元気に過ごしています。

日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人が死に至ると言われているのに、多くの方が、自分に限っては大丈夫だと考えてしまいがちですよね。私もそうでした。とはいえ一応検診を受けておこうかぐらいの気持ちで、毎年、区の無料検診には行くようにしていたのです。

ところが2010年は本当に忙しくて……。家事と仕事の両立に加え、娘の保育園の送り迎えや、経営する鉄板焼きのお店での接客、さらに義父に悪性リンパ腫が見つかるという深刻な事態も重なり、区の検診を受けそびれてしまいました。この話を知り合いの医師にしたところ、人間ドックを勧められ、年をまたいだ1月に実行。正直、面倒くさいなと思ったのですが、あのとき先生のアドバイスを無視していたら、いま私はこの世に存在していなかったかもしれません。

3月半ば頃だったでしょうか。医師より連絡を受けたという夫から「親父だけじゃなく、アッコもらしいよ」と、まさかの自宅内告知。その後、医師から正式に告知を受けました。

もちろんショックでしたが、その実、私自身はあまりピンときていませんでした。おそらく自分の父親と妻が同時期にがんを患うという状況になった夫のほうが、落胆が大きかったのではないかと思います。あるとき夫が誰にともなく「俺が悪いのかな」とつぶやきました。私はその言葉を聞いて、「申し訳ないことになってしまった」と、事の重大さを痛感したのです。でも夫が後ろ向きな言葉を口にしたのは、後にも先にもこの一度きりでした。(一部抜粋)


他にも、 幡野広志さんの「余命3年、ただいま 人生の答え合わせ中」「ルポ 悩みを抱えすぎないための 患者と家族の〈駆け込み寺〉」、鳥集徹さん、内野三菜子さんの「必要な情報を選び取る力が、 患者の最大の武器になる」などが掲載されています!

目次・購入

 

[読みもの]

 

コメディが人生の転機を作ってくれた
賀来賢人

立て続けに強烈なキャラクターを演じ、抜きん出た個性に注目が集まっている賀来賢人さん。しかしデビューから12年の道のりは必ずしも順調な時ばかりではなかったと言います

できなかったら死んだほうがいい

20代半ばぐらいまでは、役者として少しつらかったかな。焦っていたし、もがいていましたね。同世代の俳優が活躍しているのを見て、「おくれを取った」と勝手に思い込んでいたんです。ただ舞台などの仕事を地道に頑張ることで、確実に力をつけてきたという思いもあったので、あとは運とタイミングだけだ、と。「早くチャンス、来い!」と、いつでも飛び出す準備はできていました。

俳優としての意識が変わったのは、26歳頃。役者として「この先どうなるんだろう」と一番悶々としていたとき、福田雄一監督に「役者として今、迷ってます。僕はどうすればいいですか?」と相談したんです。そうしたら「コメディの道を一回極めなさい。やり切れ!」とアドバイスされました。それまで自分のなかに特にビジョンもなかったので、なるほど、一度コメディを突き詰めてみよう、と。変顔だろうが何だろうが、本気でやり切ることを心がけていたら、流れが一気に変わりました。福田さんは僕のなかのコメディアン的な素質を見抜いて、強みになると思ってくれていたんでしょうね。(一部抜粋)

目次・購入

 


他にも、

〈追悼 田辺聖子さん〉
寄稿 女たちのバラ色の炎 林真理子
どうしても聞けなかったこと 國村隼

〈手で書いたものには「気」が入る〉
辞令職の業務の一環として 「令和」を揮毫しました
茂住修身(菁邨)

〈迷う背中を賛美歌が押してくれた〉
〝「異邦人」の久保田早紀〟を 私が脱ぎ捨てた理由
久米小百合

などなど、盛りだくさん。ぜひご一読ください!!

目次・購入