日本時間の1994年7月8日、向井さんを乗せたスペースシャトル「コロンビア(STS-65)」号が打ち上げられた

向井 宇宙はスケールが大きいと言うけれど、スケールは物差しの目盛りのようなもの。大きいと全体像は見えても、ザルみたいにこぼれ落ちるものが多くなる可能性があるし、小さいと細かいところは見えるけど、緻密すぎて目詰まりすることもあるわけです。どの分野も、見えているところと見えていないところがある。

酒井 なるほど、少し自信が出てきました(笑)。私は微細な現象にズームインするタイプなので、広い部分が見えていない気がしていましたが、人それぞれのやり方があるんですね。

向井 そうですよ!

 

宇宙開発のもっとも大きな成果は

酒井 ところで、私たちの生活には宇宙開発で得られた知識や技術がどんなふうに生かされているのでしょうか。

向井 身近なところでは「マテリアル・スピンオフ」といって、技術的な副産物。人工衛星の発達からカーナビなどのGPS機能が向上したり、天気予報の精度が格段に上がったことです。私の専門である医療分野でいえば、データを遠隔で飛ばすテレメトリーという技術によって遠隔治療が可能になったこともそうです。50年以上も宇宙開発をしているのですから、まだまだたくさんありますよ。

酒井 スマホのGPS機能には、すごくお世話になっています。