向井 でも私は、宇宙開発のもっとも大きな成果はほかにあると思います。それは日本語で表現しにくいのですが、「スピリチュアル・スピンオフ」といって、「私たちが住める場所は地球しかない」という事実を人類が認識できたこと。
酒井 地球にしか住めない、というと……?
向井 宇宙には無数の星がありますが、地球ほど多様化した生命を育める環境を持つ星は今のところ見つかっていません。太陽からの距離がちょうどいいから水も蒸発しないし、質量があるから薄皮饅頭のように薄い大気でも空気をとどめておけている。
でも、水や資源をみんなが勝手に使えばあっという間に枯渇してしまうし、陸続き海続きの地球でどこかの国がCO2を大量に出せば、全体の温暖化を引き起こしてしまう。絶妙なバランスで成り立っている地球だからこそ、各国が協力して環境保護に取り組まないと、あっという間にこの状態は守れなくなってしまうよ、ということです。
酒井 SDGsという言葉をひんぱんに耳にするようになりました。地球を外から見たからこそわかる環境保護の重大さなのですね。
向井 私は初めて宇宙から地球を見た時、こんなにきれいな場所を世界中の人と共有し、故郷だと言える自分を誇らしいと思ったんです。国同士で争ってる場合じゃなく、人類の共通の敵は何かを考えていかないと。
酒井 私も、宇宙から地球を見てみたい気持ちになってきました。そのためには宇宙飛行士にならないと、ですね……。
向井 百聞は一見に如かず、です。