〈原因〉原因は不明。ストレスが関係か

突然の胸痛を引き起こすたこつぼ型心筋症。心臓は、左心室が規則正しく伸縮を繰り返すことで、全身に血液を送っています。ところが、たこつぼ型心筋症になると、左心室の先端部(心尖部)の収縮力が弱くなり、左心室の根元の部分(心基部)だけが収縮するので、全身へ十分な血液を送り出せなくなります。あたかも首を絞められたかのような左心室の形が、たこ漁のときに使われる「たこつぼ」に似ていることから「たこつぼ型心筋症」と命名されました。

左心室がたこつぼの形になる原因はまだ明らかになっていませんが、震災後に多く発生したことから、精神的ストレスが関係する、と考えられています。

人間は危険を感じると、身体を守るためにカテコラミンというホルモンを分泌します。別名《闘争ホルモン》と呼ばれるカテコラミンには、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質がありますが、身体の運動機能を最大限に高め、戦闘態勢時に最大の力が発揮できるようにするのです。しかし、あまりに大きなストレスを受けると、人間が持っている闘争反応が暴走し、身体にさまざまな負担をかけ、病気を発症させます。たこつぼ型心筋症はその一つ。大きなストレスが原因なので、家族を突然に亡くした時などにも起きますが、患者が特に多く発生するのは震災後です。