ピンチの時に真意がわかる夫婦の絆

今作で夫婦役となる二宮と多部は、2007年に同局で放送された『山田太郎ものがたり』以来、15年ぶりの共演だという。15年前は、ど貧乏な高校3年生男子とクラスメイトの女子だったふたりが、時を経てセレブ夫婦を演じるのも面白い。

ドラマの中では、大学時代に出会い、15年以上の時間を共に過ごし、地位も名誉も家族も手に入れた勝ち組といえる温人とその妻・未知留。しかし、温人が社長という立場上多忙を極め、家庭よりも仕事を優先してきた結果、夫婦仲がすっかり冷めきっていた。

現実にも、こんな夫婦はいる。とくにSNS時代の今は、豪華なディナーや夫婦の和やかな写真などをアップして、リツイートやいいねの数を競い合うタイプも。2017年の流行語大賞にもなった「インスタ映え」という言葉は、今はすでに若い世代にとって死語といわれるが、温人の家庭ほどではなくとも、SNSによって外からは幸せそうに見えているだけの夫婦や家族もいることだろう。

劇中では、皮肉にも娘の誘拐をきっかけに、再び家族の絆が強くなっていった。大事な娘を取り戻すため、なりふり構わず必死に駆け回る夫の姿を見て、忘れていた気持ちが蘇る妻。今では、温人を誘拐犯の共犯者ではと疑う相手に「安心して」と断言までする未知留。夫への信頼感の強さを見せつけたシーンが印象的だった。事件後、未知留は2人目の子を妊娠している。

実際の夫婦間でも、「もう手遅れ」となるのは、どんな時だろうか。結婚しても夫婦だけならラブラブでいられたのに、子どもができると夫に構う余裕がなくなり、夫婦関係が悪くなる場合も。出産前から自分の体を使って約10ヵ月育む女と違って、男はすぐに「父親」にはなれないし、なんなら子どもと同じくらい、妻の愛情がほしいのかもしれない。「子は鎹」と単純にはいかないのだ。ドラマの温人のように、家事や育児を妻にまる投げして無関心な夫だと、「戦力外通告」をされても仕方がない。妻が不満を言っているうちはまだましで、何も言わなくなったら危険信号だ。

しかし、ピンチの時にこそ真意がわかるもの。家庭に非常事態が起こったときに、どれだけ夫が頼れる存在なのかがわかるはず。何かをきっかけに、再び心を通わせるようになるかもしれない。人生100年時代。悔いのない人生を歩みたいものだ。

社長として、父として、夫として。迫真の演技を見せる二宮