犯人探しの考察合戦が広がる
スピーディーなストーリーゆえに、ドラマの主人公は作品の世界がブレないような人物像が求められる。その意味において二宮は完璧だ。家庭を顧みなかった温人は、誘拐事件で覚醒。父性愛を発揮して、ひとりの父として奮闘する人間臭い姿にリアリティがあり、応援したくなるのだ。
そんな温人を翻弄するのは、ひと癖もふた癖もある登場人物たち。実は温人の親友・東堂樹生(濱田岳)の娘も5年前に誘拐され、今も行方不明だと明かされた。そうなると、4つの誘拐事件が起こっていることになる。
そして今作は、警察VS犯人という単純な構成ではないところも見どころの一つ。警察に通報せずどころか、なんとかコミットしようとする警察を巻いて身代金を無事渡し娘を救った温人は、犯人から「感謝しかありません」と見込まれ「ファミリー」とまで言われてしまうのだ。また、自分の娘が誘拐されたとき助けてくれた友人の娘が誘拐されたと知ったとき、自分と家族を守るために見て見ぬフリをするのか、それとも助けにいくのか。犯人逮捕のため人質を危険にさらしても警察に連絡をするのか……人間のエゴも試される。
果たして犯人は誰なのか? SNSでは考察合戦も繰り広げられている。温人の娘の誘拐犯が自社の社員・鈴間亜矢(藤間爽子)だったことが判明した。共犯者を探るなか、予告映像では阿久津が「主犯は立脇香菜子(高橋メアリージュン)です」と話す場面も。
温人のビジネスパートナーの立脇は、何かを含んだ表情も多く、私は以前から犯人ではと怪しんでいたため、予告を見て「やっぱり立脇か!」とニヤリ。だが深読みすると、第7話で犯人として名前が出るということは、犯人じゃなさそう。しかし別の重要な何かを知っていて、温人に隠しているようにも見える。
東堂も、怪しい。朝ドラ『カムカムエヴリバディ』では、やんちゃな少年から悲哀を感じさせる老人までを見事に演じ切った演技派の濱田ゆえに、「実は犯人でした!」というオチがきても不思議ではない。温人の娘の誘拐事件について暴露本まで書いた東堂が、まだ戻らない娘のために、何かたくらんでいるとしてもおかしくないからだ。
とはいえ、娘の誘拐後に姿を消している東堂の妻、阿久津、まさかの温人……など、誰もが被害者のようでいて怪しいからこそ、推理する側の力も入って面白い。身代金受け渡しの回想シーンや写真でしかまだ登場していない東堂の妻は、宝塚を退団後に初のドラマ出演となる、元月組トップスターの珠城りょうが務めている。
先の読めない展開に「もっと振り回されたい!」と思うほど。これからどのように謎が解き明かされていくのか、引き続き、『マイファミリー』から目が離せない。