自称《落語界のアラン・ドロン》?

遊三 お前さんのことは、入門したときはこれからが大変だと思っていたけれど、当人のやる気、努力がものをいったんだろうね。二ツ目のときに大抜擢でトリをとらせてもらった。ほかに例をみないことで、あたしは自慢だった。そして何人か抜いて真打昇進。嬉しかったね。

小遊三 36歳のときでした。でも、師匠自身が13人抜きで真打になってますから。僕らの時代よりももっと価値がある。

遊三 ラッキーだったね(笑)。小遊三が真打になったとき、黒紋付に羽織袴であちこちに挨拶まわりに行くんだけど、日本テレビだったか、プロデューサーの方があたしに「キミが真打になった小遊三さんか」って。

小遊三 すっかり間違えてる。

遊三 歳が近いから、そういうこともあったね。

小遊三 弟子をもつ身になってみると、自分も師匠がやってくれたようにやっていますね。所作だとか帯の結び方だとか、細かいことはきちんと教えるけれど、あまりうるさくも言わない。

遊三 しっかり弟子を育ててるよ。みんな立派な真打になってるもの。小遊三自身も、落語での活躍はもちろん、『笑点』の大喜利レギュラーも40年近いし。で、自称《落語界のアラン・ドロン》だって? ジャガイモみたいな顔して(笑)。まあ、下着泥棒や女湯ののぞきとか、バカなネタを話していても、イヤな気にさせないし、どこか色気があるんだね。

小遊三 色っぽさでいえば師匠にはかないませんよ。僕ももう後期高齢者ですけど、その師匠が現役で高座に上がっているのって、ちょっとほかにはないんじゃないかな。僕は今も師匠の高座を見ながら、基本的な仕草をはじめ、教わったことを再確認するというか、「師匠はこうやるのか」「自分は間違えてないか」とチェックしてますよ。

遊三 今は、忘れたり、間違えたり、大変だけどね。

お前さんのことは、入門したときはこれからが大変だと思っていたけれど、真打昇進。嬉しかったねと語る遊三さん(撮影:大河内禎)