(イラスト:あべさん)
日本できょうだいのいる人の割合は年々減少しています。1986年には、子どものいる家庭のうち、2人きょうだいの割合が22.3%、3人以上きょうだいがいる家庭が7.7%だったのに比べ、2013年にはそれぞれ10.1%、3.2%と半数以下に。親の期待や介護など、きょうだいがいると心強い助けにもなれば、そうでない場合も…。近年、遺産相続のトラブルも増加傾向にあり、2019年には家庭裁判所への遺産分割協議調停申立件数は15,842件。死亡者数から換算して、87件に1件の割合で調停になっているとのこと。同じ親から生まれたきょうだいも、長年別々に暮らせば他人同然。かけがえのない存在が憎しみの対象になることもあるのです

貯金は1円単位まできっちり二等分

私には縁を切りたいと思っている姉がいる。2人姉妹で、もともと仲がよかったわけではないが、決定的になったのは父の相続だった。

父ががんで亡くなったのは2015年のこと。母は認知症を患い施設に入居中で、私は夫と別居し実家に住んでいたため、喪主を務めた。葬式が終わると、翌日も姉夫婦がやってきて、香典帳を見せろと言う。

しかし、姉夫婦は香典を持ってきていなかった。06年に姉の姑が亡くなった際には、両親は香典5万円、生花2万円、お布施2万円、もり籠1万円の合計10万円を包んだのに。義兄は、親族が集まって生花やもり籠の相談をしたとき、いの一番に「供えよう」と手を挙げたが、お金は払わなかった。

姉は葬式の翌々日には農協へ行って父の貯金をおろす書類を入手し、「署名して」と迫ってきた。いつの間にか定期貯金の残高証明書を持ち帰っていたのだ。姉の口座に全額入ることになるので躊躇っていると、「きょうだいやのに~」と猫なで声。結局、私は署名し、母にも無理やり名前を書かせ、父の貯金は姉の口座に入金された。

でも、分けてくれたのは四十九日の法要や満中陰志を送るなど、行事がすべて終わってから。父の貯金を半分くれればいいのに、姉は入ったお金、払ったお金をすべて把握しないと気が済まないらしく、遺産に香典などを足して、そこから払った金額を引き、残ったお金を二等分したのだ。しかも1円単位まで。

父の生前から、姉は金のこととなると必死だった。ある年の夏、姉が「大変よ。貯金があると施設のお金がうんと高くなるように変わったんよ。父ちゃんとお母ちゃん、貯金1人1000万以上あるん?」と興奮した様子で電話をしてきたのだ。

母と私は別世帯にしていたので、介護保険負担限度額認定証をもらい安く入居できていたが、申請時に貯金通帳を見せないといけなくなったのだ。父に聞くと、1000万円くらいはある、という。