すると姉が乗り込んできて、「貯金をおろしましょう。私が預かってあげる」と説得を始めた。父が渋い顔をしていると、姉はえびす顔で「父ちゃん、そんな顔しないで~。心配しなくていいよ。取ったりしないわヨ! 預かるだけ」と言っていたが、取るのとまったく一緒だ。
結局父は、貯金はおろしたが、姉に預けることは拒否したので、当ての外れた姉の怒ること怒ること。「父ちゃんはドケチや! いつまで生きるつもり? お金持って死ねんのに」と悪態をつく。姉はおそらく、お金が必要な事情があったのだろう。
「負の遺産」もタダでは渡さない
父の死後も姉は強引に、好きなように相続を進めた。香典を持ってきていないことを指摘したら、激怒して「あんたは性格がひねくれてる」などと中傷してくる。ひとこと言うと倍になって返ってくるので、何も言えない。
父の百箇日まで、親族が毎週お参りに来るので、姉に実家の合鍵を渡していた。ある時、母の通帳、キャッシュカードがなくなっているのに気がつき、百箇日の日に返してくれと言ったら、意外と素直に返してくれた。しかし合鍵はほしいと言う。仲の悪い姉に勝手に入られたくないので断ったら、「来るなってことじゃない!」と怒っていた。
それ以後もずっと仲は険悪で、姉は盆と正月に仏さんのお参りに来るぐらいだった。一度、家に寄りたいと連絡があり、「何の用? 私が預かっている母ちゃんの農協の通帳がどうなったのか知りたいの?」と言ったら図星。母の年金はいくら? とか、施設にどのくらい払っているの? とか聞いてきて、最後には今残高はいくらあるのか、と核心に迫ってきた。実家のお金なのに、姉は自分のものにしようと目を光らせていたのだろう。
顔も見たくなかったので、母に会いに施設へ行くときは姉が行く昼前後は避けるように。一度、運悪くバッティングしてしまい、自分でも顔面蒼白になるのがわかった。施設のスタッフの間でも仲が悪いことは知られていて、そのとき居合わせたスタッフが、「空気が凍った」と別のスタッフに話したそう。