「顔では食べられないのよ」

しかし、私の家族は猛反対。なぜなら夫は自由業、今でいうフリーターだった。一方、わが家は全員公務員。「結婚は遊びとは違う、生活だ」と両親も姉たちも反対した。姉は「あんたがメンクイなのは知っているけど、顔では食べられないのよ」と心底心配していたが、私は誰の忠告にも耳を貸さず、結婚式の日取りを決定。

貯金はないと聞いていたので、結納はパスした。両親は「お前が公務員だから、なんとか食べていけるだろう」と、泣く泣く式に出席してくれたのだ。

数ヵ月後、友人も青少年の集いで知り合った人と結婚。お相手は、田舎から出て来た後、若くして自分の稼ぎで一軒家を購入した苦労人だった。

お互いに子どもが生まれると、子連れでよく遊びに行った。子育てが終わり親の介護が始まってからは、会って喋るのが私たちの息抜き。同じような苦労を経験し、わかり合えていた。

だが、私が気づかないうちに運命の歯車は少しずつずれ始めていたようだ。きっかけは、私が1人目を妊娠したときに仕事を辞めたことだろう。彼女はどんなことがあっても働き続けた。

子育てしていたときは4人の子どもを保育所に預け、お母さんががんになったときは退勤後に病院通い。「しんどくない?」と聞くと、「辞めたら二度と戻れない職場なのでもったいない」と話していた。